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図1◎5軸制御レーザ加工機「VLD-300」。航空機のディフューザの穴開けに使用する。加工時間を従来の1/10に短縮できる。
図1◎5軸制御レーザ加工機「VLD-300」。航空機のディフューザの穴開けに使用する。加工時間を従来の1/10に短縮できる。
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図2◎5軸制御レーザ加工機「VLD-300」。航空機のディフューザの穴開けに使用する。加工時間を従来の1/10に短縮できる。
図2◎5軸制御レーザ加工機「VLD-300」。航空機のディフューザの穴開けに使用する。加工時間を従来の1/10に短縮できる。
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 米国シカゴ市で開催されている工作機械見本市「IMTS2008(シカゴショー)」(2008年9月8~13日)の会場で,海外メーカーが仕掛けた「価格破壊」の波紋が,日本の工作機械メーカーに広がっている。その反応は各社各様で,あるメーカーは「脅威だ」と言い,またあるメーカーは「当社とは市場が違う」と冷ややかに傍観する。

 日々,米国の顧客に工作機械を販売している代理店の米国人社員はこう語る。「現時点では多くの米国の顧客が韓国メーカーよりも日本メーカーの方に信頼を寄せている。だが,その差は縮まっている。(IMTS2010が開催される)2年後は分からない」。販売の第一線にいるこうした社員の声を聞けば,日本メーカーが海外メーカーや低価格機種をどのように評価しようとも,簡単には無視できない存在になっていると言って間違いないだろう。

 こうした中,韓国や台湾メーカーの台頭について「脅威だ」との認識を示すのが,三井精機工業だ。だが,同社にはこれらの低価格メーカーに正面を切って対抗する考えはない。「高精度こそ生命線」と考える同社にとって,低価格機種を造るという思想も経営リソースも持たないからだ。同社の戦略は,販売台数を追わずに「オーダーメード」に徹すること。「『三井精機でしか造れない』というほど難易度の高い機械を,顧客の要求に基づいて開発して提供する」(同社)方針を貫くのである。大量生産して量産効果を生かしてコスト削減するという思想とは逆を行き,航空機の部品など難しい加工をこなす単価の高い工作機械の開発に特化して生き残るという戦略だ。

 その開発方針をいかんなく発揮したのが,5軸制御レーザ加工機「VLD-300」である(図1)。5軸制御マシニングセンタ(MC)をベースに,工具を付ける主軸をちょうどYAGレーザと取り換えた構造。このYAGレーザがドリルやエンドミルの代わりに,ワークを加工する。

 加工するワークは,航空機エンジンに使うディフューザ。最適な空気の流れを造るために,さまざまな方向に無数の穴が開いている。200個ほどの複雑な形状の部品で構成され,各部品の穴の数は500~600個もあるという。このディフューザを構成する複雑な形状の部品に対し,高速,かつ高精度に穴開け加工できるのが,新しい5軸制御レーザ加工機だ。

 ワークを固定しつつ,ドリルを使っていた従来の方法とは異なり,新しい5軸制御レーザ加工機では,常にワークを動かしながら,レーザをパルス発振させて加工する。一度のレーザ発振で完全に穴を開けるのではなく,ワークの姿勢を変えながら同じサイクルを繰り返して少しずつ穴を開けていく。こうした加工の様子から,三井精機工業はこの加工方法を「ストロボサイクル」とも呼んでいる。この仕組みにより,新しい5軸制御レーザ加工機では加工時間を従来の1/10程度に短縮できるという。

 ワークの動きに同期してレーザを発振させるために,(動きの中での)高精度な位置決めと,加減速の厳しい制御が要求される。これを満たすために,同社はまず,X,Y,Z軸の駆動にリニアモータを,B軸とC軸の旋回にはダイレクトドライブ(DD)モータを採用した。これでバックラッシをなくし,位置決め精度を高めている。加えて,慣性モーメントを抑えるために部品を軽量化した。具体的には,テーブルやサドル,スピンドルのハウジングをアルミニウム合金化した(図2)。

 新しい5軸制御レーザ加工機は,三井精機工業の5軸制御MCの高精度を評価する顧客が,「こうしたものが加工できないか」とアプリケーションを提示してきたことが,開発のきっかけだったという。これに対し,同社は「技術的に挑戦する価値がある」と判断し,開発に取り組んだという。