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図1◎米国主導で開発した立型3軸MC。トルクを大きくして重切削に強くした。
図1◎米国主導で開発した立型3軸MC。トルクを大きくして重切削に強くした。
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図2◎同じく米国主導で開発した4軸旋盤。最も大きなビルトインタイプのDDモータを搭載した機械を,米国市場向けとしてつくった。
図2◎同じく米国主導で開発した4軸旋盤。最も大きなビルトインタイプのDDモータを搭載した機械を,米国市場向けとしてつくった。
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 「韓国勢も台湾勢も脅威だ。そうでなければ,Doosan社のような韓国メーカーが2列目のブースにまで上がってこない。力があるからこそ,上がってきたという現実を日本メーカーは直視すべきだ」。ヤマザキマザックのある幹部社員はこう語る。

 「30年前のIMTS(シカゴショー)では,当社をはじめ,現在最前列のブースにいる日本メーカーは,みんな最後列にいた。そのとき最前列に陣取っていたのは米国メーカーで,彼らは日本メーカーなど歯牙にもかけなかった。そこからスタートした我々は,少しずつはい上がっていき,長い時間をかけて米国メーカーに追い付き,拮抗し,追い抜いて今がある。その間ずっと,米国メーカーは日本メーカーに対して,『技術力が違う』とか『品質に差がある』とか『市場が異なる』といった言い訳を繰り返してきた。その米国メーカーは今,見る影もない。その時の米国メーカーの姿が,今の多くの日本メーカーとダブって見える」(同幹部社員)。

 この幹部社員に限らず,歴史を知る日本メーカーの社員から同様の発言が聞こえるようになってきた。確かに,これまでも韓国メーカーや台湾メーカーの台頭を心配する声はあった。だが,危機感を覚えるという意見を大手日本メーカーからここまではっきりと取材できたのは,今回のIMTS2008(2008年9月8~13日)が初めてだ。「潮目が変わった」(同幹部社員)と見るべきだろう。

 ヤマザキマザックの社員からこうした意見が出るのは,日本の工作機械メーカーの中で,最もグローバル化に成功していることが強く影響していると見られる。「日本に閉じこもったままでは,海外勢の本当の強さが見えてこない。日本市場は排他的で,海外の工作機械を使おうとする顧客が少ないため,海外メーカーとの差はいつまでも大きいと日本メーカーは勘違いしがちだからだ。だが,米国は違う。米国の顧客は国籍による工作機械の選別などしない。今後はグローバル化をうまく進めた企業と,“内向き”の企業との差は,ますます大きく広がっていくことだろう」(同幹部社員)。

 ヤマザキマザックは他の大手日本メーカーから「マーケティング力に優れる」と一目置かれている。顧客の要望をうまく吸収して専用の機能を搭載した工作機械を形にする。そして,気が付いたらその専用機能を標準化して製品全体の競争力を高めている──。これが大手日本メーカーから見た,ヤマザキマザックの「勝利の方程式」だ。

 この方程式を解くカギの一つに,「開発の現地化」がある。米国の顧客向けの製品を造る上で,ケンタッキー工場にある開発設計部門が強い発言力を持つからだ。実際の開発設計は日本の開発設計部門と連携を取りながら進めるが,顧客に近い方が顧客のニーズをよりつぶさに,素早く吸収できる。工作機械として形にするスピードも速くなる。米国から遠い日本にいると米国の顧客の本当のニーズが見えにくい。「現地で開発するからこそ売れる。日本だけで勝手に考えて造ったら,日本にはない(米国市場の)アプリケーションはうまく取り込めないから,売れる製品にはならない」(先の幹部社員)。これが「米国主導」の開発設計にヤマザキマザックが力を入れる理由だ。

 立型3軸マシニングセンタ(MC)「NEXUS 700D-?」は,この米国主導による開発設計で生まれた工作機械の一つ(図1)。米国の顧客が好む「バリバリとワーク削れる機械が欲しい」という声に,ストレートに応えた。主軸の回転数を6000rpmに抑える代わりに,トルクを800N・mまで高めて,重切削向けの工作機械を造った。

 4軸を備えた旋盤「HYPER QUADREX 450 M」もそうだ(図2)。建設機械のクランクシャフトなどの大物ワークを旋削するために,把持したワークを回転する主軸の駆動に,ビルトインタイプのダイレクトドライブ(DD)モータを採用したことが大きな特徴。3種類のラインアップをそろえる同旋盤シリーズの中で,最も大きなDDモータを搭載したタイプを米国市場向けの製品とした。米国の顧客がより大きな切削力を求めることを,米国の開発設計陣はよく把握していたからだという。

 ヤマザキマザックは高付加価値の機種から低価格の機種までそろえるフルラインアップメーカーだ。それでも,韓国メーカーや台湾メーカーと直接価格で勝負する工作機械は展開していない。

 安さよりも生産性の高さを重視した工作機械を造る。多少価格が高くなる点は,開発設計の現地化により顧客志向の製品を実現し,「売れる製品」を造ることでカバーする──。現時点ではこれが,低価格メーカーに対する,マザキマザックの対抗策の一つとなっているようだ。