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図1◎日系自動車メーカーにおける超ハイテン採用の動き。今回の提携によって神戸製鋼とKAV社は,2011年以降の超ハイテンの採用を加速させる狙いだ。
図1◎日系自動車メーカーにおける超ハイテン採用の動き。今回の提携によって神戸製鋼とKAV社は,2011年以降の超ハイテンの採用を加速させる狙いだ。
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図2◎冷間プレスとホットスタンプ,ロールフォーミングが得意とする部品。超ハイテンのロールフォーミング技術は,アスペクト比の大きな部品に向く。
図2◎冷間プレスとホットスタンプ,ロールフォーミングが得意とする部品。超ハイテンのロールフォーミング技術は,アスペクト比の大きな部品に向く。
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図3◎CR1470を加工した場合の吸収エネルギの比較。ロールフォーミングは,冷間プレス比で吸収エネルギが約25%高い。
図3◎CR1470を加工した場合の吸収エネルギの比較。ロールフォーミングは,冷間プレス比で吸収エネルギが約25%高い。
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図4◎ロールフォーミング部品の適用事例。両社は今後,3)のように適用の拡大を図る。
図4◎ロールフォーミング部品の適用事例。両社は今後,3)のように適用の拡大を図る。
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 神戸製鋼所とオーストリアvoestalpine Krems(VAK)社は2008年9月11日,引っ張り強度が1180~1470MPaの超ハイテン(高張力鋼)のロールフォーミング技術*1で提携すると発表した。これに基づき両社は,日系の自動車メーカーに対し,2011年以降のモデルに向けて超ハイテンのロールフォーミング部品の採用を働きかける計画だ(図1)。

 CO2排ガス規制への対応として車体の軽量化が進んでおり,車体構造部材への超ハイテン材の使用が拡大している。しかし,超ハイテン材の優位性を引き出せる加工方法の開発が不十分だった。例えば,これまで多く使われてきた冷間プレス工法は,フロア・パネルやウインドウ・フレーム,シート・フレームなど比較的引っ張り強度が低い素材を使用する,アスペクト比の小さい(長細くない)部材に向く。だが,超ハイテン材を加工するには通常のプレス機では能力が足りない。一方で,近年採用が増えているホットスタンプ*2工法は超ハイテン材を使ったサイドメンバなどの加工に適用できる。しかし,加熱を伴うため脆性(ぜいせい)や耐食性の点で劣り,アスペクト比の大きい部品には向かない(図2)。

 それらに対してロールフォーミングは,ほかの工法では実現できない複雑な形状に加工できる,非熱処理のため耐脆性や耐食性を損なわない,といった長所を持つ。自動車の構造部材を作製する場合,同一の素材・板厚なら冷間プレスに比べて衝突変形時の吸収エネルギが25%高いものを得られるので,その分板厚を薄くでき,約15%の軽量化を実現できるという(図3)。コストについては,冷間プレス比で約15~20%程度,ホットスタンプ比で約30%削減できるとする(いずれも,神戸製鋼による試算)。

 ロールフォーミングのスタンド数は25~30段で,複雑な形状の部品でも60段程度。鉄鋼設備や20~30kNの冷間プレス機に比べて小規模で済むのも利点だ。ロールフォーミング用の設備を持つメーカーでは,超ハイテン材の加工にも既存の設備を使える。

 ロールフォーミングの採用例としては,日系の自動車メーカーでは,1180MPaの超ハイテンをバンパに採用した例がある。さらに欧州のメーカーでは,バンパとドアビームに同じく1180MPaの超ハイテンを,サイドシルやルーフレールなどにもハイテンを使用した例があるという。両社は今後,こうした部材により引っ張り強度の高いハイテンの採用を提案する(図4)。

 今回の技術提携により素材メーカーである神戸製鋼は,超ハイテン材の供給拡大を図る。一方のVAK社は,日系自動車メーカーの欧米の生産拠点に部品を供給する狙いだ。その前段階として両者は,ロールフォーミング技術を持つ国内の部品メーカーに対して技術支援を行う。

*1 ロールフォーミング:複数のさまざまな形をしたローラによって鋼板を折り曲げ,望みの形状を得る加工法。
*2 鋼板を加熱することで変形しやすくし,金型で鋼板を成形すると同時に急冷する加工法。成形前よりも高い強度を得られる。ダイクエンチ(Tech-On!関連記事)とほぼ同義。