PR

 比較的早い時期からマイコンが使われている家電製品の一つに電気ポットがある。適温を維持するためにマイコンを使った温度制御システムが導入された。さらに最近の電気ポットには,マイコンを利用した機能が続々と加わっている。電気ポットの大手である象印マホービンに最新製品におけるマイコンの役割について聞いた。

図1
図1 進化を続ける電気ポット
(写真は象印マホービンの最上位機「優湯生」)

 電気ポットにとって最も重要な機能は,湯を沸かして適正な温度に保つこと。この機能を実現するためにマイコンは最適なデバイスと言える。従来は一般的だったサーモスタットを使ったシステムでは,ヒーターのオンかオフという簡単な制御しかできないので,設定温度と湯温との差がどうしても生じる。マイコンを温度制御に使えば設定温度が近づくにつれてヒーターの能力を調整するといった細やかな制御ができるので,設定温度との誤差を抑えることができる。しかも,設定温度を自由に切り替えられるのもマイコンならではの機能である。これにより乳児用のミルク作りなどやや低い温度の湯が必要な場合にも,電気ポットを利用できるようになった。

 象印マホービンの場合,最初に電気ポットにマイコンを搭載したのは80年代半ばのことだ。それから20年余りを経た最近では,同社の大半の電気ポットにマイコンが搭載されている。もともと機能がシンプルな電気ポットでは,もはやマイコンの応用は出尽くしたのではないかとも思える。ところが実際にはマイコンを使った新しい機能が,続々と生まれている(図1)。

温度変化の傾きで空だきを検知

西 広嗣氏
象印マホービン
商品企画部サブマネージャー
西 広嗣氏

佐藤 大介氏
象印マホービン
第一開発室
佐藤 大介氏

 その一つが,安全性を高めるための「空だき」防止だ。空だき検知のためだけに水の有無を検出するセンサーを搭載するのはコストの点で難しい。そこで目を付けたのが,もともとポット内にある温度センサーである。ポット内の温度の変化から,空だきを検知する機能を実現した。温度上昇があまりにも急激な場合,「水」を温めているのではなく「空気」を温めていると認識。つまり空だきの状態と判定してヒーターを切る。「サーモスタットを使う電気ポットでは,水温が沸騰温度の約100度に達するとヒーターは切れるようになっています。同様に空気が100度に達すれば自動的にヒーターは切れます。ただし,マイコンを使って温度変化の傾きで検知すれば,電気ポットの内部が100度に達する前に空だきを検知してヒーターを遮断できます」(同社商品企画部サブマネージャーの西広嗣氏)。

 高地で利用する場合を想定した機能もある。最近の電気ポット多くには最初に水を100度で沸騰させてカルキをとばす機能を備えている。ところが標高の高いところでは水が100度になる前に沸騰してしまうため,電気ポットは100度まで水温を上げようと熱を与え続けてしまう。そこでマイコンで,100度以下でも一定の水温以上に上がらないと認識した場合は,既に沸騰していると認識して保温モードに入るようにした。

 湯を少しずつ吐出する「カフェドリップ」機能も,マイコンで実現した機能だ。ドリップでコーヒーをいれる場合,コーヒー豆を蒸らすために湯を少しずつ注ぐのが理想とされる。「カフェドリップ機能をオンにすると,湯を吐出するモーターの回転数を抑えて湯が少しずつ吐出されるようにして,ポットから直接ドリップに湯を注ぐことができるようにしました」(同社第一開発室の佐藤大介氏)。湯がコーヒー豆にあたって飛び散ることがなくなる点も,カフェドリップ機能の利点と言える。  さらに最近では,「省エネ」に対する消費者の意識が高まっていることを背景に,同社は電気ポットの省電力化にも取り組んでいる。ここでもカギを握るのはマイコンだ。