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 今までSiCの学会で登壇していなかった本田技研がついに成果を発表する――

 多くのSiC技術者が注目する中,本田技術研究所と新電元工業の研究グループが,SiC製の新型BJT(bipolar junction transistor)を「7th European Conference on Silicon Carbide and Related Materials(ECSCRM)」で発表した(講演番号:Th2-1)。独自の構造を持つとして,「Suppressed Surface Recombination structure(SSR)-BJT」と呼ぶ。BJTとして「最高水準の特性」(本田技術研究所の登壇者)だという。同研究グループは,ハイブリッド車や電気自動車などで使うDC-DCコンバータやインバータに向けた次世代パワー半導体素子の研究開発を進めている。

 最高水準とうたうのは,高い電流増幅率である。具体的には耐圧950Vで,電流増幅率134を達成した。今まで大きいもので,耐圧600~1000Vの場合に約70だったという。電流増幅率が高いほど,小さい電流でBJTをスイッチング可能になり,BJTの制御回路の小型化を図れる。BJTはオン抵抗が小さいといった利点があるものの,電流制御型のため,BJTの制御回路が大きくなりやすいという課題があったとする。

 そこで,今回,キャリアが流れる領域をキャリアのトラップから離す構造を設けることで,電流増幅率を大きくした。具体的には,エミッタとベースの間に「Lightly Doped N-type layer (LDN-layer)」と呼ぶn型層を設け,さらにエミッタのメサ・エッジとベースのコンタクト領域に「a High Resistive P-type region(HRP-region)」と呼ぶ高抵抗のp型領域を作り込んだ。理想的には,このHRP-regionだけで電流増幅率向上を見込めるが,高い精度でAlを注入してHRP-region を作れないため,LDN-layerを設けている。

 試作品は耐熱性も高く,室温で電流増幅率が134だったものが,250℃でも60を維持できるという。オン抵抗は3.2mΩcm2である。こうした特性は,アクティブ領域が1.5×10-4cm2の小型チップで実現したものだが,より大きなチップでも同程度の特性になるとみる。既に大きさ5.4mm角,アクティブ領域0.25cm2の大型チップを作成済みで,「今回のデータを出した小型チップと同じ基板上に作製したので,同程度の特性になるはず」(本田技術研究所の登壇者)と自信を見せる。

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