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 ソニーは,同社の液晶テレビ「BRAVIA」の画面上で動作するウィジェット*1を開発できるSDK「個人向けソフトウエア開発ツール」を公開した(ニュース・リリース)。

*1 インターネットのWWWサイトなどから情報を取得して表示できるアプリケーション・ソフトウエア

 このSDKで開発したウィジェットをソニーに投稿すれば,同社による審査を経て,日本全国のBRAVIAでダウンロード可能になる。個人が開発したウィジェットを実行できるのは,2008年以降に同社が発売した「BRAVIA」ブランドの液晶テレビである。これらのテレビには,テレビ画面でウィジェットを表示できる「アプリキャスト」機能が搭載されている(Tech-On!関連記事)。個人向けSDKの公開にあわせてソニーは,優秀な自作ウィジェットを表彰する「テレビウィジェットコンテスト」を開催する(募集要項)。

図1 ソニー ディスプレイマーケティング部の小板秀昭氏(右)とソニー テレビ事業本部の岡本直也氏(左)
図1 ソニー ディスプレイマーケティング部の小板秀昭氏(右)とソニー テレビ事業本部の岡本直也氏(左) (画像のクリックで拡大)

 ソニーがテレビ向けウィジェットのSDKを個人に公開した狙いは何か。ソニー ディスプレイマーケティング部 ディスプレイMK課 マーケティングマネジャーの小板秀昭氏と,同社 テレビ事業本部 ソフトウェア技術部門 共通ソフトウェア設計部 APシステム設計課 ソフトウェアデザイナーの岡本直也氏に話を聞いた。

(聞き手=竹居 智久,浅川 直輝)






――今回,個人向けにウィジェットのSDKを公開するに至った経緯を教えてください。

小板氏 アプリキャストを開始した2007年当初,利用できるウィジェットの種類はたった6つでしたが,1年を経て今では35個と充実しました。これらはソニーが公式ウィジェットとして提供するもので,多くのユーザーに役立つ,いわば王道的なウィジェットといえます。

図2 サービス開始当初は6個だったウィジェットは,今では35種類が入手可能に
図2 サービス開始当初は6個だったウィジェットは,今では35種類が入手可能に (画像のクリックで拡大)

 こうした王道的なウィジェットだけではなく,個人の自由な発想が産んだ,独創的なウィジェットが配信できないか・・・と考えたのが,個人向けSDKを公開した理由です。

岡本氏 テレビの画面に表示するウィジェットは,テレビ放送とは違い,万人に受け入れられるものである必要はありません。むしろ,100人に1人が『これは欲しい!』と思えるようなウィジェットを100個並べることはできないか,と考えてSDKを開発しました。

 2007年春にアプリキャストのサービスを開始して以来,ウィジェットの開発環境をユーザーにも公開したい,という思いはありました。特にその意を強くしたのが,社内でウィジェット開発コンテストを開催したときです。自分の作ったウィジェットがテレビで動作する様は技術者の心を大いにくすぐったようで,60件前後の応募がありました。その中には「この発想は思いつかなかった!」と思えるウィジェットがいくつもありました。

図3 社内コンテスト向けに開発された「囲碁将棋再生」。テレビを「ながら見」しながら新聞欄の棋譜を並べることが趣味の技術者が,「テレビに棋譜並べを代行させられないか・・・」と考えたのが開発のきっかけという
図3 社内コンテスト向けに開発された「囲碁将棋再生」。テレビを「ながら見」しながら新聞欄の棋譜を並べることが趣味の技術者が,「テレビに棋譜並べを代行させられないか・・・」と考えたのが開発のきっかけという (画像のクリックで拡大)

 その一例が,インターネット上にある囲碁の棋譜データを基に,過去の囲碁の対戦を再現するウィジェットです。まさに,100人に1人が「欲しい!」と思うウィジェット・・・と言ったら,開発者から「日本の囲碁人口をなめるな!」と怒られましたが(笑)。囲碁をしない人間にとってはピンとこないウィジェットなのですが,社内の囲碁好きのツボには大いにはまったようです。

――ウィジェットの実行環境について教えてください。

岡本氏 基本的にはパソコン用のウィジェットと同様に,XMLとJavaScriptで記述します。制作したウィジェットは,SDKに含まれるアプリキャスト エミュレータで動作を確認できます。

図4 XMBおよびアプリキャストの動作を再現できるソフトウエア「アプリキャスト エミュレータ」
図4 XMBおよびアプリキャストの動作を再現できるソフトウエア「アプリキャスト エミュレータ」 (画像のクリックで拡大)

図5 ウィジェットを構成するのは,JavaScriptのソースコード「widget.js」と,レイアウトを記述する「layout.xml」,ほか複数のxmlファイルや画像ファイルである。複数のjsファイルを用いることはできない
図5 ウィジェットを構成するのは,JavaScriptのソースコード「widget.js」と,レイアウトを記述する「layout.xml」,ほか複数のxmlファイルや画像ファイルである。複数のjsファイルを用いることはできない (画像のクリックで拡大)

図6 開発したウィジェットはパソコンのエミュレータ上で動作を確認できる。このほか,ウィジェットの構成ファイルをコピーしたUSBメモリをBRAVIA実機に挿せば,試作したウィジェットを実機で動作させることも可能である
図6 開発したウィジェットはパソコンのエミュレータ上で動作を確認できる。このほか,ウィジェットの構成ファイルをコピーしたUSBメモリをBRAVIA実機に挿せば,試作したウィジェットを実機で動作させることも可能である (画像のクリックで拡大)

 パソコン用と最も異なる要素は,メモリの容量制限です。三つのウィジェットを画面右に表示するモードでは,1つのウィジェットが自由に使えるヒープ・メモリは300kバイトです。一つのウィジェットを拡大表示するモードでは,ヒープ・メモリを1.3Mバイトに拡張できます。

 APIを用いて,BRAVIAが備えるアプリケーション・ソフトウエアを呼び出すことも可能です。例えば,動画や音声を再生するメディア・プレーヤー,写真の閲覧できるフォト・ビューア,Webサイトを表示できるブラウザを起動できます。ただし,これらのアプリケーションが呼び出されている間は,ウィジェットは動作できません。

――個人が投稿したウィジェットはソニーが審査するとのことですが,審査の基準を教えてください。

小板氏 公序良俗に反する有害なコンテンツはもちろん禁止です。ウィジェットを通じた商行為は,公式ウィジェットでは許可していますが,個人開発のウィジェットでは認めていません。このほか,テレビ放送と連携したウィジェットも認められません。