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 これにより,Google社はインターネット上のサービスにアクセスするコストを大幅に下げるという目標を達成できる。ただし携帯電話事業者や携帯電話機メーカーは不利益を被りかねない。携帯電話事業者は現在,自社経由で提供しているコンテンツ関連サービスの主導権を,他社に奪われてしまいかねない。携帯電話機はパソコンと同様に誰でも作れる機器になる可能性がある。

Google社は本気

 Google社が本気でこのような世界の実現を目指しているのは間違いない。「Androidの開発には,今後10年といった長期間にわたり投資を継続する」(Google社のRubin氏)。同社がじっくり腰を据えて取り組むことは,携帯電話事業に食指を動かしていることからも分かる。

 同社が狙う「オープンな世界」の構築の前にいずれ立ちはだかる大きな壁が,携帯電話事業者であることは想像に難くない。音声やデータ通信だけでは収益に限りがある携帯電話事業者にとって,コンテンツ関連サービスの主導権を奪われるのは,到底看過できない事態である。これを回避するために携帯電話事業者はさまざまな手を打つだろう。例えば「サービスの品質」や「安全性の保証」という名目で,携帯電話機から利用できるサービスに一定の制限をかける可能性がある。自社で利用する携帯電話機の仕様を決める特権を行使すれば,容易に実現できる。

 Google社は,こうした抵抗を未然に防ぐ策を講じている。その戦略の一端は,米国の700MHz帯の周波数オークションにおいて露見した。オークションに際してGoogle社は,周波数を管轄する米FCC(連邦通信委員会)にいくつかの条件を提案した。要約すれば,「周波数帯の獲得者は,消費者が自由にサービスや端末を選択して利用する権利を保証すること」である。FCCはこれに対して,オークションにかける周波数帯域の一部を「オープン・プラットフォーム」と位置付け,Google社の要求に沿った形の制限を盛り込んだ。

 FCCの決定は米国の携帯電話事業者に早くも影響を及ぼしている。米国で第2位の事業者のVerizon Wireless社は,2008年後半をメドに,自社の所有する携帯電話網を,ほかのサービスやコンテンツの事業者に開放する方針を打ち出した。自社が所有するネットワークや周波数を使って,ほかの事業者がサービスやコンテンツを提供したり端末を販売したりすることを認める。

 ただし,既存の事業者による取り組みは絵に描いたもちに終わる可能性がある。自社経由のサービスしか受けられない端末を安価に売り続けてオープンな端末の効力を骨抜きにするかもしれない。Google社はそこまで見越しているようだ。同社は700MHz帯のオークションに自ら参加する意向を2007年11月末に発表した。自身が周波数帯を押さえることで,オープンなサービスの火付け役になろうというのだ。