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2)権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入

 現行の著作権法は,著作物の公正な利用を図るという観点から,私的使用のための複製(第30条)や引用のための利用(第32条)など,個別の事例に沿って権利を制限する規定を定めている。しかし,「近年の技術革新のスピードや変化の速い社会状況を考えれば,個別の限定列挙方式のみでは適切に実態を反映することは難しく,著作権法に定める枠組みが社会の著作物の利用実態やニーズと離れたものとなってしまうという懸念がある」として,権利制限の一般規定の導入を検討してきた。

 今回の報告書案では,「個別の限定列挙方式による権利制限規定に加え,権利者の利用を不当に害しないと認められる一定の範囲内で,公正な利用を包括的に許容し得る権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入することが適当である」とした。また,この一般規定とこれまでの個別規定の関係として,「権利制限の一般規定が定められた後も,(中略)必要に応じて権利制限の個別規定を追加していくことが必要である」とした。著作物の利用者が「何が問題になるか」を予見しやすくなることや,適正かつ迅速な裁判が可能になるという観点からは,個別具体的な規定の方が望ましいためと説明している。

 知的財産戦略本部はこの専門調査会の結論を基に,法制化を検討する文化庁などに日本版フェアユースの導入を提言していくことになる。実際の規定に関しては,「『公正な利用は許される』のような広範な権利制限を認めるような規定ではなく,『著作物の性質』『利用の目的及び態様』など具体的な考慮要素を掲げるべきである」という方向性を示した。

 この日本版フェアユース規定の導入については,ある委員から,「『これまで判例により違法とされた行為を適法とするものではない』という文言を追加するべきではないか」という意見があった。これについて複数の委員で「違法行為を助長するものではないことを明言することは大事」「今までの厳格過ぎる運用から変えることが趣旨だったはず」といった意見が交わされ,この調査会の会長を務める中山信弘氏は「『場合によってはフェアユースで救える事例もある』という趣旨であり,違法だったものがほとんど適法になるというものではない」と説明した。

3)ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化

 この論点では,「コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制の在り方」「インターネット・サービス・プロバイダの責任の在り方」「著作権法におけるいわゆる『間接侵害』への対応」「国際的な制度調和等」についての検討結果を示した。いずれも,現状の問題点は指摘したものの,結論としてはどのような対策を採るべきかの可能性を示すに留まった。

 コンテンツの技術的な制限手段の回避に対する規制については,不正競争防止法による規制の見直しなどの可能性があるとした。不正競争防止法では,コンテンツの技術的な制限手段を回避する機能“のみ”を持つ装置やプログラムの提供を規制している。現行の不正競争防止法の実効性の検証は不可欠であるが,その対象範囲を広げるといった規制の見直しも必要であるとした。

 インターネット・サービス・プロバイダの責任については,「自主的な取組を発展させることと併せて,制度上の見直しについても検討を行い,実効性のある方策を構築することが必要」とした。実効性のある方策の例として,動画投稿サイトの運営者といった特定のプロバイダーに標準的なレベルの技術的な著作権侵害防止措置の導入を義務付けるというものを挙げた。その上で,そうした措置を導入しているなど一定の要件を満たす事業者は損害賠償や差止などの請求を受けないことにするといった免責事項を設けるという案を示した。

 いわゆる「間接侵害」(※著作権法には間接侵害に関する規定はない)については,「著作権法における間接侵害の明確化に関する検討を早急に進め,行為主体の考え方を始め差止請求の範囲を明確にすること等が必要である」とした。また国際的な制度調和については,著作権のみを取り出して国際裁判に関する問題を検討する必要性があるかどうかは今後の動向を見極める必要があるとした。現状では著作権は特許などと比べて国際的な訴訟の実例が少ないため,固有の課題が明らかでないためと説明している。