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図1◎回収した使用済みの超硬工具
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図2◎酸化処理したもの
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図3◎精錬によって得たAPT
図3◎精錬によって得たAPT
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図4◎APTから得たWC
図4◎APTから得たWC
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図◎Coなどと混ぜて再び超硬にする
図◎Coなどと混ぜて再び超硬にする
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図6◎リサイクル後の超硬工具
図6◎リサイクル後の超硬工具
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 2008年11月4日まで開催の「第24回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2008)」(東京ビッグサイト)では,超硬工具メーカー各社がリサイクルへの取り組みを紹介している。原料であるタングステン(W)やコバルト(Co)の価格が高騰する中,安定して原料を調達するための取り組みとしてリサイクルが注目される。

 三菱マテリアルは,2008年3月から展開しているリサイクル事業を紹介した。同社の技術の特徴は「酸化焙焼法」という手法により,スクラップ超硬工具を「完全原料化」できることだ。スクラップ超硬工具を酸化させた後,粉砕して溶剤につけ込み,パラタングステン酸アンモニウム(APT)やCo,コーティング用のチタンなどを分けて材料ごとのリサイクル工程へ送る。APTについては,再び酸化させて三酸化タングステン(WO3)とし,その後タングステンカーバイド(WC)あるいはWを得る。約125kgのスクラップから,約100kgのWを得られる。このWはバージン材のため,そのまま超硬工具の原料として再利用できる(図1~6)。W以外でも27種類の成分を再資源化できるという。

 三菱マテリアルは,同社の100%子会社であり「国内で唯一」(同社)Wを精錬できる日本新金属(本社大阪市)の秋田工場(秋田市)内にW粉末工場設置し,リサイクル事業に取り組んでいる。現在のスクラップの回収率は10%程度だが,2012年には50%の回収を目指す。

 同社がこの事業を始めた理由の一つは,W価格の高騰だ。日本で使用するWのほとんどは中国からの輸入品だが,その価格は10年間で7~8倍になっている。リサイクルにより,安定して原料を入手できる。もう一つの狙いは,品質だ。中国は,以前はAPTの状態でWを輸出していたが,最近はWCに加工して輸出する場合が増えている。だが,こうしたWCは超硬工具の原料として使用するには品質が劣るため,高品質のWCを入手するにはリサイクルの方が適しているのだという。

 三菱マテリアル以外では,住友電工ツールネット(本社大阪市)でも化学的な処理によってWCを取り出す研究を進めている。もともと同社は,1980年代から「亜鉛処理法」による超硬工具のリサイクルに取り組んでいる。この方法は,化学処理に比べて小規模な設備で済み,処理コストも抑えられるのが利点。だが,回収時に種類を細かく分けなければならず,得られるWの品質にも限界がある。

 一方の化学処理は,上記のように高品質なWを取り出せるのが利点だ。しかし,大量の薬品を使うため環境負荷が大きいなどの課題もある。そこで同社は,APTを回収する際の環境負荷とエネルギ消費を低減できる新しいプロセスの開発を目指す。この研究は,2007年7月に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「エネルギー使用合理化希少金属等高効率回収システム開発事業」の委託研究テーマとして採択された(Tech-On!関連記事)。現時点では亜鉛処理法も引き続き展開する予定だ。

 超硬工具協会によれば,世界でのW消費量は年間7万t。それに対して米国の鉱物資源調査で確認できた現在の確定埋蔵量は290万t余りとWが希少なことから,各国が自国での確保を優先し,日本では安定確保が難しくなっているという。今後,Wを安定して確保するには,リサイクル率を高める必要があるが,使用済みの超硬工具(チップ)のリサイクル率は,欧米が約40%なのに対し日本は20%程度と低いのが現状だ。