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図1(a) 指向性制御できるスピーカー・システム。手前の銀色のアレイ状スピーカー・モジュール(2個1組)が左右方向の指向性を制御できる。後ろ側のハチの巣状スピーカー(2個1組)が上下左右,さらに斜め方向に指向性制御可能。
図1(a) 指向性制御できるスピーカー・システム。手前の銀色のアレイ状スピーカー・モジュール(2個1組)が左右方向の指向性を制御できる。後ろ側のハチの巣状スピーカー(2個1組)が上下左右,さらに斜め方向に指向性制御可能。
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図1(b) 右方向に指向性制御したときに,音声が一番よく聞こえたところ。
図1(b) 右方向に指向性制御したときに,音声が一番よく聞こえたところ。
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図1(c) 左方向に指向性制御したときに,音声が一番よく聞こえたところ。
図1(c) 左方向に指向性制御したときに,音声が一番よく聞こえたところ。
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図2 アレイ状スピーカー・モジュール
図2 アレイ状スピーカー・モジュール
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図3 制御用ボード
図3 制御用ボード
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 Trigence Semiconductorは,フルデジタル・スピーカーを利用して音声出力の指向性を制御する技術を開発し,この技術を用いたスピーカー・システムを試作した。複数のスピーカーを一列のアレイ状に並べたスピーカー・モジュールを使ったシステムでは,左右方向あるいは上下方向の所望の方向に音声出力の向きを変えられる(図1)。スピーカーをハチの巣状に配置したスピーカー・モジュールのシステムでは,上下左右に加えて上下左右の斜め方向にも音声を出力できる。試作機で音声出力方向を変えられる角度は,アレイ状スピーカー・システムでは中心から長手方向(スピーカーが連なる方向)に中心部から±30度,ハチの巣状スピーカー・システムは左右方向が中心部から±30度,上下方向に±20度。制御パラメータにより,これらの角度は変更可能である。フルデジタル・スピーカー技術とは,デジタルのオーディオ信号を入力し,この信号を空間で合成して空気の振動に変換するというもの(Tech-On!関連記事1Tech-On!関連記事2,)。

 指向性制御技術は,大型テレビやアーケード・ゲーム機,アミューズメント機器などに向くという。「大型テレビは,画面が大きくなるほど画像表示の位置と音声が聴こえる位置のズレが気になる。今回の技術で音声出力の方向を調整すれば,このような違和感は解消される」(同社 取締役の岡村淳一氏)。同社は,今回開発した指向性制御可能なデジタル・スピーカー技術を組み込んだ評価ボードを用意しており,今回の技術を使ったスピーカー・システムの開発を機器メーカーと進めたい考え。要望があれば,この評価ボードのみを外販することも可能とする。「既に一部の国内外の音響メーカーやテレビ・メーカーに紹介済み。評判は上々」(同氏)という。

デジタル信号で直接駆動だから安価に


 指向性の高い音声出力は,各スピーカーが発する音波の干渉効果を利用して作る。音波の干渉効果は,各スピーカーを駆動するデジタル信号の位相(遅延)を調整することで,制御された所望の指向性を得る。複数のスピーカーをアレイ状に並べ,各スピーカー出力の遅延を調整して音声出力の指向性を生み出す技術はこれまでもあった。既に実用化しており,例えばヤマハの「デジタル・サウンド・プロジェクター」が用いている。Trigence Semiconductorが今回開発した技術がこのような従来技術と異なるのは,個々のスピーカーにデジタル・オーディオ信号を直接入力して音声を出力するフルデジタル・スピーカー技術を使っている点である。フルデジタル・スピーカー技術では複数のスピーカーを制御に使うLSI(試作機ではFPGA)とドライバ回路(試作機では耐圧20VのMOSFETなどの個別部品で組んでいる。技術的には制御用LSIと1チップ化可能)で済むので,マルチスピーカー・システムを安価に実現できる。従来技術ではスピーカーの個数が増えるごとにアンプ回路を追加する必要があったからだ。

 Trigence Semiconductorによれば,マルチスピーカー・システムを液晶テレビなどに使い,音響特性の増強を考えている機器メーカーは少なくなく,そのようなメーカーから同社に問い合わせが来ているという。「これまでの技術でマルチスピーカー・システムを組むとなると,スピーカーの数が増えるごとにアンプ回路などの部材コストが掛け算で増えてしまう。これがマルチスピーカー・システムのテレビへの適用の障害になっていた」(Trigence Semiconductorの岡村氏)。テレビでは価格競争が激しいためだ。フルデジタル・スピーカーを用いると「極端にいえば,コストアップはスピーカーの個数分だけで済む」(同氏)とみる。

横向きにすれば左右方向,縦向きにすれば上下方向に指向性制御


 今回試作した指向性制御できるスピーカー・システムの概要は次の通り。アレイ状スピーカー・モジュールは,直径1インチの小型スピーカーを8個1列に並べた(図2)。これを2組使うとステレオ再生できる。モジュールを横向きに設置すると左右方向,縦向きだと上下方向に指向性を制御できる。システムはカメラなどに使う3V電池で駆動している。

 制御用ボードは,スピーカー・モジュールごとに用意する。ボードには,信号処理と制御を実行するFPGA,スピーカー駆動にMOSFETなどで組んだドライバ回路を実装している(図3)。スピーカー・モジュールの厚さは50mm弱あるが,もっと薄くすることは容易とする。なお,小型スピーカーにはパソコンに搭載するような汎用品を使う。スピーカー・システムの試作に当たってはリードサウンド,音響特性の調整にはヒビノTICの宮本宰氏の協力を得ているという。