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図1◎新鋼板の適用部位。
図1◎新鋼板の適用部位。
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図2◎実船試験(上甲板)における平均板厚減少量の比較。
図2◎実船試験(上甲板)における平均板厚減少量の比較。
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図3◎実船試験(底板)における最大孔食深さの比較。
図3◎実船試験(底板)における最大孔食深さの比較。
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図4◎極値統計処理による全タンクにおける推定最大孔食深さの比較。
図4◎極値統計処理による全タンクにおける推定最大孔食深さの比較。
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 住友金属工業は,2004年に開発した厚鋼板「SMICORE」の耐食性試験を終了した。その結果,天井部と底板部の両方で従来鋼に比べ高い耐食性を持つことを確認できたという。同鋼板は,タンカー原油タンクの天井部や底板部用に耐食性を高めたもの。同鋼板を適用することで,原油タンクの塗装フリー化やメンテナンスコストの低減を図れるとする。

 タンカーの原油タンク内は,原油や酸素,硫化水素,塩化物,水による厳しい腐食環境にあり,タンク天井部では全面腐食が,底板部では孔食が起きやすい。天井部では,腐食によって板厚減少量が年間0.1mmを超える場合があり,従来は塗装によって対応していた。一方の底板部では,約2年半ごとに実施するドックでの検査時に局部的な孔食を確認し次第,補修していた。いずれの場合も,塗り直しや補修にコストがかかるのが課題だった。

 そこで同社は,従来鋼と同等の機械特性と溶接性,溶接継手特性を確保しながら,原油タンクの天井部と底板部で優れた耐食性を発揮する鋼板を開発。2005年8月に就航した原油タンカー「SANKO BLOSSOM号」(運航者:三光汽船,建造:住友重機械マリンエンジニアリング)で約2年9カ月にわたって実船で耐食性を試験していた。

 その後の検査時に,適用部位の腐食調査を実施した(図1)。その結果,天井部では従来鋼に比べて板厚の減少量が6割程度まで減っていた(図2)。底板部については,従来鋼では深さ2mmを超える孔食が発生していたのに対し,新製品では深さ2mmを超える孔食がなかった。新製品の孔食の深さは,No.2タンクで従来鋼の1/4程度,No.3タンクで従来鋼の6割程度まで低減した(図3)。今回調査した部分の孔食深さから,統計処理で全タンクの孔食深さの最大値を推定すると,新製品の最大孔食深さは従来鋼の4割程度という(図4)。

 住友金属工業によると,IMO(国際海事機関)ではタンカー原油タンク内の塗装を義務化する動きがあり,日本として耐食鋼の使用も認めるよう提案しているという。今回の調査結果は,耐食鋼が原油タンクの腐食対策として有効であることを示したもので,今後の耐食鋼の採用拡大を図れるとみる。