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【図1】「MAG/A7」の完成予想イメージ。
【図1】「MAG/A7」の完成予想イメージ。
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【図2】富士勝山事業所で組み立て中の「MAG/A7」。
【図2】富士勝山事業所で組み立て中の「MAG/A7」。
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【図3】加工技術センタに設置された「MAG/T4」。
【図3】加工技術センタに設置された「MAG/T4」。
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【図4】「MAG/T4」の主軸。
【図4】「MAG/T4」の主軸。
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 牧野フライス製作所は2009年1月30日,航空機の機体部品加工向け5軸制御マシニングセンタ(MC)の新製品2機種を発表した。「MAG/A7」は長さが約6mのアルミニウム合金製主翼部品などの加工を想定した機械で,既存製品よりも高精度化を図っている。一方の「MAG/T4」は難切削材であるチタン合金の加工を想定しており,加工時間の短縮と工具寿命の延長を両立させた。

大型アルミ合金部品を高精度に加工する「MAG/A7」

 MAG/A7が主な加工対象として想定するのが,主翼のリブや隔壁だ。例えば,ある航空機メーカーの新機種では最も長いリブが約6mと従来機種の3.6mよりも大型化が進むと同時に,厚さが約1mmのリブ底面の寸法公差も従来の「-0.08mm/+0.25mm」から新機種では「-0.08mm/+0.13mm」へと厳しくなっているという。

 このような状況に対応するため,MAG/A7では高精度かつ大型の部品を効率良く加工できることを開発目標とした。まず,加工中の工具の先端位置を補正して精度を向上する「Volumetric Accuracy Compensation(体積空間精度補正)」機能を搭載。X軸,Y軸,Z軸の移動量(主軸の位置)に応じた補正マップと,A軸(主軸の傾斜),C軸(主軸の回転)の移動量(主軸の姿勢)に応じた補正マップを作成し,これらを組み合わせて補正量を算出する機能だ。言い換えると,X,Y,Z,A,C各軸の移動量の組み合わせと,その場合のX,Y,Z,A,Cそれぞれの補正量を関連づけておく。長さ3mのワークを加工できる既存機種で実験したところ,最大で105μmの誤差が発生した位置でも,同機能を使うことで誤差を15μmにできたという。

 このほか,機械本体とテーブルユニットの上部同士を2本のサポートビームで結合して動剛性を向上させたこと,特別仕様としてサーマルチャンバを用意したことなども精度向上を目的としたものだ。

 主軸の移動量はX軸方向で7000mm,Y軸方向で2500mm,Z軸方向で1000mmだが,最大ワークサイズは7000×2000×700mm。Y軸やZ軸で移動量と最大ワークサイズに差があるのは,A軸を90°傾斜させた側面加工を考慮したためで,Y軸方向には主軸ユニットや工具の長さ分,Z軸方向には主軸ユニットとパレットの干渉回避を目的とした余裕を持たせてある。なお,A軸の可動範囲は±110°,C軸の回転角度に制限はない。

 C軸の回転角度に制限がないことは,加工時間の短縮に大きく貢献する。特に,リブのポケット部内面を加工する際には,C軸を同一方向に回転させながらの連続加工が可能になる。主軸には最高回転速度が3万3000rpm,出力が80kW,トルクが23.1N・mの「HSK-F80」を採用しており,切りくず排出量は最大で毎分5400cm3。X軸の駆動にはリニアモータを採用し,7mのストローク全域で加速度0.5Gと送り速度40m/minを実現している。

加工時間の短縮と工具の長寿命化を両立したチタン合金部品向けの「MAG/T4」

 一方のMAG/T4は,乗降口など機体の開口部に配置するエッジフレームなどのチタン合金製部品を加工対象とする。CFRP(炭素繊維強化樹脂)との熱膨張率の差から,アルミ合金を採用しにくい部分などでの採用が増えており,現在開発中の新機種では質量比で約15%になっているという。

 しかし,チタン合金は難切削材のため,従来は加工時間の短縮と工具費の削減を両立させるのが難しかった。このためMAG/T4では,(1)高トルク主軸の採用(2)機械構造の高剛性化(3)加工振動を能動的に減衰する機能の搭載(4)クーラントの高圧/大容量化――などを実施。従来機種と比較して,荒加工では工具寿命を維持しながら加工時間を1/10に,中仕上げ加工では工具寿命を5倍に延ばしながら加工時間を1/2に,仕上げ加工では工具寿命を維持しながら加工時間を1/12にできた。

 荒加工では,工具径の全幅を利用したフルスロット加工を可能にし,最大切りくず排出量が500cm3/minと従来の10倍に高めている。従来,フルスロット加工では切りくずが工具の溝に詰まって折損するといった問題があったが,高圧/大容量のTSC(スルー・スピンドル・クーラント)によって切りくずの排出性を向上。TSCでは水溶性クーラントを200L/min,7MPaで主軸軸心内部から工具ホルダに供給し,工具先端における実流量175L/m,実圧力6.9MPaを実現する。さらに,圧縮空気を摺動(しゅうどう)面の空間に送り込むことで摩擦力を調整して減衰率を高める仕組みの採用やテーブル側の剛性向上などによって,大きな切り込み量でもびびり振動が発生しない安定的な加工を可能にしている。

 中仕上げ加工と仕上げ加工は,浅い切り込みと送り速度の高速化,多溝工具の採用によって工具寿命と加工時間のトレードオフを解決する。切り込みを浅くすることで工具寿命は延びるが,一般的には加工時間が長くなってしまう。それを補うために20枚,30枚といった多溝工具を使い,送り速度を速める。ただし,多溝工具もチップポケットが小さくて切りくずがつまりやすいという難点があるため,これを前述のTSCで解決する。

 主軸は1000rpm近くまでトルク1000N・mを実現する出力100kWのモータを内蔵する。最大ワーク寸法は幅4000×奥行き1500×高さ700mmだ。

 価格は,MAG/A7が4億円(税別,パレットチェンジャは含まず),MAG/T4が2億5000万円(同)。いずれも2009年5月の出荷開始を予定している。航空機部品加工に関する市場動向について同社は,2009年1月の第3週以降,米国,英国,ドイツ,ロシアなどのユーザーから具体的な引き合いを同時に受けるなど,2008年秋以降の低調な引き合い状況に海外市場においては変化が見られているるという。また,今回は発表した2機種それぞれについて,既に具体的な販売先が決まっていることを明らかにしている。