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長い歴史を持つ磁気センサは,折り畳み型携帯電話機の開閉検知などの用途への採用がきっかけとなり,大きく市場が拡大し始めた。ここにきて,1mm角で0.4mm厚前後の製品が登場するなど小型化や薄型化が着実に進展している。新規参入メーカーも増える中で,製品選択のポイントや実現技術の特徴などを解説する。連載の目次はこちら(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年3月24日号,pp.89-91から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 磁気センサは,小型の磁石を動く物体に配置し,磁界の強さやその変化をとらえて物体の接近や移動,あるいは回転を検知するセンサである。同じく磁界を検知する地磁気(方位)センサや,従来の磁気テープ向け磁気ヘッドなどとは,動作原理こそ似ているが,検知できる磁束密度の高さが異なる(図11)

†磁束密度=単位面積当たりの磁束の強さ。単位は,T(テスラ),Wb/m2,Gaussなど。それぞれは,1T=1Wb/m2。1mT=10Gauss,で換算できる。地磁気の強さは約0.05mT。
図1 小型化で優れる磁気センサ 磁気センサと他の磁気素子に関して,特徴や主な用途を比較した。磁気センサは,地磁気(方位)センサ並みに感度が高いと,地磁気が雑音となってしまい利用できない。一方で,磁気テープ向け磁気ヘッドの感度の下限より強い磁束密度の磁石を使うと,クレジッ トカードなど身近な磁気製品を壊してしまう恐れがある。磁気センサには地磁気センサほどの高感度は求められないため,地磁気センサよりも一段の小型化が進んでいる。
図1 小型化で優れる磁気センサ 磁気センサと他の磁気素子に関して,特徴や主な用途を比較した。磁気センサは,地磁気(方位)センサ並みに感度が高いと,地磁気が雑音となってしまい利用できない。一方で,磁気テープ向け磁気ヘッドの感度の下限より強い磁束密度の磁石を使うと,クレジッ トカードなど身近な磁気製品を壊してしまう恐れがある。磁気センサには地磁気センサほどの高感度は求められないため,地磁気センサよりも一段の小型化が進んでいる。 (画像のクリックで拡大)

 まず,磁気センサが検知できる磁界は磁気ヘッドのそれよりも弱い。磁気センサは携帯機器などへの適用を想定しており,強い磁石を使うことによるクレジットカードやICカードへの悪影響を避けるためである。その半面,磁気センサは地磁気センサほど微小な磁界は検出しない。感度が高すぎると地磁気が雑音となって,磁気センサ本来の機能を果たせなくなるからだ。感度をそれほど高めずに済むため,磁気センサは地磁気センサよりも開発が容易になり,その結果,より一層の小型化が進んでいる。

 磁気センサの市場はここ5年ほどで急速に拡大しつつある。利用の歴史は古く,30年以上前からさまざまな用途に使われている。例えば,水道管や給湯器の配水管に小型のプロペラを入れておき,その回転を磁気センサで検知することで水流量を測るといった用途である。ただし,従来の用途は市場規模的に飽和感が強く,かつて製品を供給していた大手電機メーカーが軒並み撤退するなど,それほど将来性が高い製品分野ではなかった。

2002 年以降出荷が急増

 流れが変わるきっかけは折り畳み型携帯電話機の普及である。折り畳み型携帯電話機では,省電力化のために,端末を閉じた際に液晶パネル用バックライトの電源を自動的に遮断する。当初は端末の開閉を検知するのに「リード・スイッチ」と呼ぶ機械的なスイッチが用いられていた。ところがこのスイッチは長さが3 ~5cmと長く,小型化,薄型化が進む携帯電話機には適用しにくくなった。

†リード・スイッチ=先端にそれぞれS極とN極の磁石を付けた2本の針金を細いガラス管に差し込んだセンサ。外部磁場によって2本の針金が接触し,電気回路がつながる現象を利用して開閉を検知する。