今回の技術の概要 SeleteによるMIRAIの成果(上)とジーダットの技術(下)から成る。左端はNEDO技術開発機構の富田健介氏。日経BPが撮影。スライドはNEDOのデータ。
今回の技術の概要 SeleteによるMIRAIの成果(上)とジーダットの技術(下)から成る。左端はNEDO技術開発機構の富田健介氏。日経BPが撮影。スライドはNEDOのデータ。
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MIRAIの成果 TEG(左)とシミュレータを使った解析技術(中央から右)から成る。左端はSeleteの最上徹氏。日経BPが撮影。スライドはSeleteのデータ。
MIRAIの成果 TEG(左)とシミュレータを使った解析技術(中央から右)から成る。左端はSeleteの最上徹氏。日経BPが撮影。スライドはSeleteのデータ。
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ジーダットが整備した解析フロー 青い工程は,従来のモンテカルロ手法と同じ。赤い部分を今回開発した。左端はジーダットの蜂屋孝太郎氏。日経BPが撮影。スライドはジーダットのデータ。
ジーダットが整備した解析フロー 青い工程は,従来のモンテカルロ手法と同じ。赤い部分を今回開発した。左端はジーダットの蜂屋孝太郎氏。日経BPが撮影。スライドはジーダットのデータ。
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シミュレーション回数の削減技術のイメージ 以前のシミュレーションで確認できた良品,不良品の領域に関してはシミュレーションしない。シミュレーションを繰り返すと不明の領域が減ってくる。なお,真の境界は,結果として分かるものである。ジーダットのデータ。
シミュレーション回数の削減技術のイメージ 以前のシミュレーションで確認できた良品,不良品の領域に関してはシミュレーションしない。シミュレーションを繰り返すと不明の領域が減ってくる。なお,真の境界は,結果として分かるものである。ジーダットのデータ。
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 NEDO技術開発機構は,2月4日に東京で報道機関向け説明会を実施し,SRAMメモリー・セルの特性バラつきを高速に解析できる技術を開発したと発表した(ニュース・リリース)。従来のモンテカルロ手法を使った場合に比べて,解析速度を約600倍に高められるという。

 プロセス微細化によって,1チップ上で隣り合うトランジスタの特性がランダムにバラつくことが問題になっている。SRAMメモリー・セルの六つのトランジスタの間で,大きなランダム特性バラつきがおこると,メモリー・セルが動作しなくなる。特性バラつきを製造前に高精度に予測することで,設計や製造で適正なバラつき対策を打ちやすくなる。結果として,SRAM開発が効率化する。今回の発表によれば,今回の高速解析技術によって,半導体(SRAM)プロセスの開発期間とコストが約30%削減できる,という。

 今回の技術は主に二つの要素からなる。一つはMIRAIプロジェクト「ロバストトランジスタ」の下でSelete(半導体先端テクノロジーズ)が開発したもので,高精度に特性バラつきを解析する技術である。もう一つは国内EDAベンダーのジーダットが開発したもので,上記の解析を高速に実行するための技術である。

 このうち,Selete/MIRAIの技術は,主に二つある。(1)PMOSとNMOSのトランジスタの特性バラつきを抽出するためのTEG「DMA-TEG」と,(2)抽出した特性バラつきを加味した回路シミュレーションをモンテカルロ手法で実施して,SRAMメモリー・セルの特性バラつきを高精度に解析する技術である。これらの二つを使って,実測とほぼ一致した解析結果が得られるようになったことを,説明会で明らかにした。

 ただし,MIRAIの成果の二つだけでは,解析時間がかかりすぎて,実用的でなかった。そこで,ジーダットが解析の高速化を図る技術を開発した。同社はこの技術をSSBL(境界学習によるサンプル選別)法と呼ぶ。SSBL法は,モンテカルロ手法を高速化する技術である。

 単純なモンテカルロ解析では,パラメータを少しずつ変化させて,すべてのパラメータ・セット(サンプルと呼ぶ)に対して回路シミュレーションを実行する。このため,全体として莫大な時間がかかる。SSBLでは,サンプルを絞りこんで,回路シミュレーション数を削減する。ジーダットによれば,単純な手法に比べて,1/1000の回数で済むようになるという。

 SSBL法では,あるサンプルのシミュレーションを実行するたびに特性解析を実行し,メモリー・セルが「正しく動作する」か「正しく動作しない」,「不明」に分類する。次のサンプルのシミュレーションを実施する前に,そのサンプルと,以前のサンプル群の解析結果を照らし合わせる。これで,そのサンプルが「正しく動作する」か「正しく動作しない」のどちらになることが判定できれば,シミュレーションを省略する。「不明」の場合のみ,シミュレーションを実施する。処理を進めると,不明の部分は減少していく。これで高速化が図れる。

 ジーダットは今回の技術を生かして,回路シミュレータを製品として販売する計画である。まず,2009年中に先行ユーザーに現場での評価を兼ねて導入してもらう。1~2年以内に広く市場で販売したい,という。

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