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 「ISSCC 2009」のSession 9 「Data Converter Technique」は,前半3件がパイプライン型A-D変換器で主にデジタル・アシストを使って高性能化する手法の提案,後半が通信用ΔΣ型A-D変換器で広帯域化のため連続時間型回路を使う報告だった。全体にデジタル・アシスト技術やタイム・ドメイン処理が広がってきたのが大きな流れといえる。

 デジタル・アシスト技術は,微細化を進めるとトランジスタの出力抵抗が下がりアンプ利得が得られないなどの問題に対し,微細化でふんだんに使えるようになるデジタル回路を使って特性を補正したり,はじめからデジタル補正を前提にアンプを使わないアーキテクチャを開発するといった技術である(論文番号9.1,同9.2,同9.5-9.8)。タイム・ドメイン処理は,微細化に伴って電源電圧が低下し電圧領域の分解能を扱うことが難しくなってきているのに対し,回路が高速になって扱いやすくなる時間領域の分解能を使おうとする技術である(同9.4,同9.7)。デジタル・アシストと,時間領域分解能の議論は,このところ変換器分野の話題となっており,この分野の進展にしばらく注意する必要がある。

 米University of California,San Diego校は,オンチップのデジタル・バックグラウンド・キャリブレーションを搭載したパイプライン型A-D変換器を発表した(同9.1)。内部DACの分解能を増やしてゲイン誤差と歪みを補正する。90nm世代のCMOSで1.2V,130mW,SNDRは69dB,100Mサンプル/秒,FoMは0.52pJ/conversion-step,この精度,帯域,電源電圧レベルではほぼ最高値を達成している。

 カナダUniversity of Torontoらの発表では,パイプライン型でアンプをやめ,2個の容量を並列に充電し直列に接続し直すことで2倍のゲインを実現する(同9.2)。利得のズレとバラつきはデジタル・キャリブレーションで補正する。デジタル・アシストを使えばアンプはいらないという発想には驚かされる。有効ビット9.5ビットで9.9mW。50Mサンプル/秒,FoMは0.3pJ /s。

 米MITは,2006年から提案しているオペアンプを電流源とゼロクロッシング検出器に置き換えるパイプライン型A-D変換器を発展させたものを発表した(同9.3)。今回は完全差動型でコモンモード・フィードバックを不要にした。12ビット,50Mサンプル/秒,4.5mW。FoMは0.88pJ/s。

 米University of Michiganらは,時間領域の変換を用いた低電力A-D変換器を開発した(同9.4)。9ビット,1Mサンプル/秒を14uWで得た。入力範囲をカバーするランプ電圧と入力電圧の交差を時間デジタル変換器(TDC)でデジタル値に直す。FoMは0.98pJ/s。

 論文番号9.5からは通信用の広帯域連続時間ΔΣ変換器である。MITのΔΣ変換器は,VCOを量子化器に使ったΔΣ変換器。VCOは+1/-1出力のマルチビット量子化器として使え,無損失連続時間積分器のように振舞うため次数を1次上げる効果がある。ループの中にVCOを使って電圧-周波数特性の非線形性影響が出ないようにする。20MHzバンド幅で78dBのダイナミック・レンジを87mWで得ている。FoMは0.33pJ/s。

 台湾MediaTek社からの発表は2MHz帯域80dBの3次ΔΣである(同9.6)。遅延が小さいダイナミック・エレメント・マッチングを提案した。65nm世代で面積が0.084mm2と小さい。FoMは0.15pJ/s。

 米Qualcomm社らは,20MHz帯域で68dBのΔΣ変換器を発表した(同9.7)。時間領域の量子化器を用いているところが新しい。PWMとTDCで量子化器を実現する。65nm世代CMOS技術を用い,消費電力は10.5mW,FoMは0.32pJ/sである。

 ベルギーIMECらが発表したのは,2次-1次を従属に接続するカスケード(MASH)型ΔΣである(同9.8)。2段目のサンプリング周波数を4倍にすることでS/Nを7dB改善した。このΔΣだけはループ・フィルタを離散時間型で実現している。GSM/Bluetooth/ UMTSを受信できるソフトウエア無線用で,SNDRは77/76/65 dB,,消費電力は3.43/3.7/6.87mWである。FoMは2.86/0.74 pJ/s (GSM/BT)。