PR

 「ISSCC 2009」の「Session 14:Digital Wireless and Re-configurability」では,デジタル無線技術に関する論文5件と,米Intel Corp.によるリコンフィギュラブルSIMDアクセラレータの発表1件があった。超低消費電力を狙ったデジタル無線通信技術を中心に,種々の動作モードに対応するリコンフィギュラブル技術の発表もあり,特に高エネルギー効率化の技術提案が活発なセッションとなった。

 デジタル無線技術については,まず,ベルギーLeuven大学と米Massachusetts Institute of Technology(MIT)が「IR-UWB(Impulse Radio Ultra-Wideband)」通信技術による1チップ受信機とベースバンドLSIについてそれぞれ発表した。IR-UWB通信は今後センサ・ネットワークなどへの展開が進み,人体計測をはじめとする応用が期待されている。

 Leuven大学は,IR-UWBのアナログ・フロントエンド, デジタル・ベースバンド, 測距アルゴリズムを1チップに実装した消費電力110pJ/パルスのフルレシーバを発表した。測定電力660nJ/測定で,距離測定精度1cm以下を実現している。MITは,RF部とベースバンド部を1チップ化した動作電圧0.55V,消費電力1.6mWのパルスUWB受信機を実現した。modified同期コードとQCORRというアルゴリズムの改良によって,Pulsed-UWBの同期位置の精度を高めている。

 IR-UWBのほかでは,カナダToronto大学によるMIMO検波器の発表が注目を集めた。MIMOは,多様な高品質放送・高レート通信に向けたWiFi,WiMAXや 4G向けの携帯機器用通信技術に今後展開されていく。Toronto大は今回,256QAMまでの拡張性を持った4x4 64-QAM MIMO検波器を発表した。最小限探索オンデマンド方式とパイプライン化によって低消費電力を実現している。

 なお,デジタル無線技術関連ではこれら3件のほかに,台湾MediaTek Inc.によるGPS用SoCと,伊仏STMicroelectronics社によるデジタル・チャネル・マルチプレクサの発表があった。

 通信以外では,Intelが45nm CMOS技術を用いたリコンフィギャラブルSIMDアクセラレータを発表した。マルチメディア処理に有効なSIMDアーキテクチャを採用したアクセラレータをリコンフィギャラブルな構成にして,2種類の供給電圧切り替えることで,エネルギー効率を向上させた発表である。

 今回の発表論文はいずれも,低電力技術のアプリケーションにおける高エネルギー効率を中心とした高性能化・多様化が特徴である。低電力・低コスト化のためのアルゴリズムとハードウエアの密接な協調設計や各種標準仕様への適用性といったスケーラビリティの重要性が一層明確になってきた。今後の低電力化の展開が垣間見られるセッションだったと言える。