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 「ISSCC 2009」のSession 12「RF Building Blocks」は,イタリアUniversity of PaviaによるTVチューナー向け2次歪み低減低雑音増幅器(LNA)や,東芝が発表したBluetooth向け0.6V動作ミキサなど要素回路の最先端技術の提案のほか,オランダUniversity of Twenteによるソフトウエア無線向け受信回路方式など計9件の発表があった。

 微細化に応じて高性能アナログ回路の低電圧動作が必要になり,要素技術で1V近辺あるいは1V以下で動作する回路の検討が進んでいる。本セッションでも低電圧動作の回路が目立った。また,TVチューナーなどをビークルにした広い帯域を持つ要素回路の発表のほか,フロントエンドに妨害波除去フィルタを必要としない新しい受信回路の提案もあった。低電圧化,広帯域化,フロントエンド・フィルタの不要化がここ数年のチャレンジであり,本セッションでも多くの新技術が登場した。

 最初のPavia大の発表(論文12.1)はTVチューナー向け広帯域LNAに関する技術である。従来外付けで構成していたバランを不要にすることを目指し,回路で発生する偶数時の歪みを抑圧することで28dBmのIIP(Input Intercept Point)2を達成しダイナミック・レンジの改善を図っている。米Georgia Institute of TechnologyとSamsung RFIC Design Centerの発表(同12.2)は,正帰還と負帰還を組み合わせることで高利得と低雑音を両立させる増幅器に関する技術である。最小雑音指数(NF)2.0dBと-3.0dBmのIIP3をわずか3.6mWで達成している。米California Institute of Technologyからは,従来知られるDistributed 増幅器を構成する各単位増幅器の相互コンダクタンスに重みをつけることで雑音を軽減する構成が提案された(同12.3)。1-10GHz以上の帯域で4.5dB以下のNFを実現する。

 Twente大は4相クロックを用いたミキサの高い線形性と低い変換損失をいかしてLNAを用いない受信回路を提案した(同12.4)。東芝の発表は,Bluetoothに向けた電流再利用形の0.6Vで動作する2乗ミキサに関する技術ものである(同12.5)。ローカル信号のRF入力への漏洩が2乗ミキサの弱点であるが,受動素子のみで構成するCyclic RF+LO Combiner回路によって漏洩をキャンセルした。-14dBmのLO信号で駆動でき,特性指数(FOM)20.8dBを達成する。

 米Intel Corp.とイタリアMilan Polytechnic Universityの発表は分数分周を使いトランシーバで問題となるVCO Pulling現象を回避する技術である(同12.6)。分周器動作の遅延を詳細にキャリブレーションすることで,分周器のスプリアスを30dB近く抑圧する。オランダEindhoven University of TechnologyとBroadcom社,Holst Centreは共同で,低消費電力で動作する周波数ホッピング用シンセサイザのベースバンド部分に関する技術を発表した(同12.7)。0.75V,350μWという低電圧,低消費電力で動作する。RCフィルタの時定数を送信周波数に応じて切り替え,スプリアスの抑圧も図っている。

 最後の2件(論文12.8と同12.9)はともにTwente大の発表である。一つは,ソフトウエア無線に向け,従来ダイレクト・コンバージョン受信回路で必須だった受信周波数の整数倍高調波を落とすためのフィルタを不要にする技術である(同12.8)。ハーモニック抑圧ミキサをカスケードに接続することでLO信号の高調波による影響を抑圧した。もう1件の発表では,ハーモニック抑圧ミキサを1段用いて,あとはデジタル・ドメインで処理することで同様に高調波の影響を抑圧した(同12.9)。

 ソフトウエア無線はいろいろな定義があるが,「ISSCC 2006」のころからの一連の傾向を見る限り,フロントエンドで必要だったSAWフィルタなどの外付けフィルタを不要にすることで多くの周波数に柔軟に対応するトランシーバを目指している。このような傾向は,他のセッションにも共通して見られ,今後も注目していく必要がある。