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図1:産業技術総合研究所(産総研)がリグニンに無機塩を添加して作製した中空炭素微粒子。例えば200mLの容器に入れた試料の重量が3g弱と,非常に軽量である
図1:産業技術総合研究所(産総研)がリグニンに無機塩を添加して作製した中空炭素微粒子。例えば200mLの容器に入れた試料の重量が3g弱と,非常に軽量である
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図2:産業技術総合研究所(産総研)がリグニンに無機塩を添加して作製した中空炭素微粒子。
図2:産業技術総合研究所(産総研)がリグニンに無機塩を添加して作製した中空炭素微粒子。
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 産業技術総合研究所(産総研)は,製紙原料のパルプなどを生産するときの副産物であるリグニンに無機塩を添加して,直径数n~数十μmで軽量な中空の炭素微粒子を製造する技術を開発した(発表資料)。リグニンは国内での生成量が年間700万tに達するが,現在はほとんどが焼却処分されている。製造した中空炭素微粒子は,例えば200mLの容器に入れた試料の重量が3g弱(図1)と,非常に軽量である。カーボンブラックの代替としてゴムやプラスチックなどと複合化することで,軽量化や柔軟性付与などの特性の改善を図るといった用途を狙う。

 水溶性リグニンと無機塩を水溶液とし,スプレーや超音波霧化によって小さな液滴にする。それを乾燥させると、リグニンと無機塩の複合微粒子が得られる。この複合微粒子を600~800℃で熱分解した後,洗浄乾燥した。これにより,1μm未満から数十μmの中空炭素微粒子を作製した。

 無機塩の種類によっては,添加量を増やすにつれて,作製する中空炭素微粒子の殻が薄くなる傾向があるとする。無機塩の添加量を制御することで,嵩(かさ)密度が10g/L以下の微粒子も作製できたとする。また作製条件によっては,4200kg/cm2(約4200気圧)の圧力で押しつぶした後,常圧に戻すとほぼ元の形状に復元する弾力性を備えた中空炭素微粒子も作製できたという。添加する無機塩の種類や添加量を制御することで,例えば外径が3n~30nmで炭素壁の厚さが1n~5nmの中空炭素ナノ微粒子や,カーボンブラック粒子に類似した10n~100nmの炭素ナノ微粒子なども製造できたとする。

 今回の開発では,原料に市販のリグニンを用いた。パルプ製造工業の副産物としてのリグニンは,他の有機物や無機塩が大量に混入した,黒液と呼ばれる廃液の形で排出される。そこで,(1)限外濾過膜により,黒液から比較的分子量の大きな成分のみを分離する,(2)炭酸ガスを黒液に吸収させて,中性付近で溶解性の低い成分を沈降分離する,という二つの方法で分離したリグニン成分に,今回の技術が適用できるか試みた。いずれの方法で分離したリグニンからも,中空炭素微粒子が作製できたという。

 産総研は今後,今回の中空炭素微粒子を,ゴム補強剤や軽量充填材,柔軟性付与材,断熱素材,導電材料,静電防止材,吸着材,徐放材などに向けて用途の開発を進めていくとする。

 産総研は今回の技術の詳細を,2009年2月18~20日に東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2009」で発表する。