PR
微粒子をマスクとして利用し,エッチングをかけている様子(上)。左下はこの回折格子を形成した4インチのSiO2ウエハー。中央下は,回折格子の断面写真。右下は,微粒子が自己組織化によって整然と並んだ様子。
微粒子をマスクとして利用し,エッチングをかけている様子(上)。左下はこの回折格子を形成した4インチのSiO2ウエハー。中央下は,回折格子の断面写真。右下は,微粒子が自己組織化によって整然と並んだ様子。
[画像のクリックで拡大表示]

 東芝は,有機ELテレビや有機EL照明の光取り出し効率を大幅に高める技術を「nano tech 2009 国際ナノテクノロジー総合展」に出展した。「ナノ回折格子」と呼ぶ数百nmピッチのパターンをSiO2基板上に形成する技術である。

 有機EL照明では,特別な対策を施さない場合,光取り出し効率が25%ほどと低いことが課題になっている。東芝はこのナノ回折格子を有機EL素子に用いたところ,光取り出し効率が何もしない場合の1.6倍に向上したという。回折格子には,格子間隔と同程度の波長の光を取り出す効果があることが以前から知られている。ただし,可視光の波長間隔を持つ回折格子を精度よく製造する技術がこれまではほとんどなかった。

 東芝はこの回折格子を「自己組織化ナノ加工」と呼ぶ技術で製造し,有機EL素子の光取り出し効率を高めることを目指した。具体的には,SiO2基板上にまずレジストを敷き,さらにその上に熱可塑性の樹脂を薄く敷く。次に,樹脂の上に直径が数百nmと小さいSiO2の微粒子を分散液に溶いて堆積させる。この時,微粒子は特別な制御がなくても,互いの相互作用によって高密度かつ整然と配列する。東芝はこれを「自己組織化」と呼んでいる。その後,分散液を飛ばしてから加熱すると樹脂が柔らかくなり,微粒子の最下層が樹脂にめり込み固定される。

 樹脂に固定された微粒子は,この後のエッチング工程の中でマスクの一種として働く。この結果,SiO2基板に整然とした回折格子が微粒子の寸法とほぼ同じピッチで形成できる。実際に作製した回折格子の格子間隔は700nm,格子の溝の深さは440nmである。

 東芝はこの回折格子を4インチのSiO2ウエハー上に作製した。これを2mm角の単色の有機EL素子に用いたところ,全光束が回折格子を用いる前に比べて60%強まった。発光のピーク波長に限れば,発光強度は約2倍になったという。