PR
東証の伊藤豊氏。同氏は財務省から出向する形で,TOKYO AIMの設立を主導している。カネボウやダイエーなどの経営再建に貢献した産業再生機構にも出向した経験がある。
東証の伊藤豊氏。同氏は財務省から出向する形で,TOKYO AIMの設立を主導している。カネボウやダイエーなどの経営再建に貢献した産業再生機構にも出向した経験がある。
[画像のクリックで拡大表示]

 東京証券取引所グループ(東証)は現在,ベンチャー企業向けの新たな証券取引市場「TOKYO AIM(トウキョウ エイム)」の設立準備を英London Stock Exchange Group plc(LSE)と共同で進めている。最大の特徴は,四半期決算の開示義務や内部統制報告書(J-SOX)の提出などを不要にし,ベンチャー企業などが同市場に上場するコストを大幅に低減した点だ。

 一般に証券取引市場に上場する企業は,株主数や時価総額の下限などの基準に加えて,金融商品取引法(金商法)の規定により,四半期決算の開示や内部統制報告書の提出義務などがある。これは東証が既に運営しているベンチャー企業向け証券取引市場「東証マザーズ」の上場会社も同じである。資金の少ないベンチャー企業にとっては,こうした上場コストが過剰な負担になっている側面があり,TOKYO AIMではこうした制限を撤廃した形だ。

 ただし,上場会社に対しこれらの基準を撤廃すると,投資家は投資先の企業に関して適切な情報を得にくくなる。このためTOKYO AIMでは,市場で株式を売買できる投資家を機関投資家などプロの投資家(特定投資家)に限定し,一般の個人投資家は参加できない仕組みにした。さらに上場会社に対し上場審査や助言などを行う専門の「指定アドバイザー(J-Nomad)」と呼ぶ仕組みを設け,プロの投資家に伝わりやすい形で情報開示を促す。

 ベンチャー企業にとってはTOKYO AIMの活用により,従来より早い段階での上場が可能になり資金を調達しやすくなるほか,上場後もJ-SOXや四半期決算開示の義務がないため,ランニング・コストの負担が少ないという利点がある。

 TOKYO AIMのプロジェクトを主導する東証 経営企画部 兼 上場部 企画統括役の伊藤豊氏に,設立の狙いと展望について聞いた。(聞き手=進藤 智則)

――TOKYO AIMの現在の状況は?

伊藤氏 英London Stock Exchange(LSE)と合弁でTOKYO AIMのための新会社を設立する。2008年12月に既に登記は済ませた。出資比率は東証が51%,LSEが49%だ。証券取引所を開設するには,金融庁から免許を取得する必要がある。2009年3月中にはこの免許を取得し,2009年4月には指定アドバイザー(J-Nomad)の認定,早ければ2009年春ころには第1号の上場企業が出ることを期待している。

――TOKYO AIMは,上場基準を緩めたことになるのか?

伊藤氏 規制を緩めた市場ということでは決してない。四半期決算の開示が必要ないとはいえ,年2回の決算開示は依然として必要だ。また,J-SOXに沿った報告は必要ないにしても,内部統制自体は企業にとって普遍的に必要なものだ。単にJ-SOXを嫌うだけのような企業は,TOKYO AIMにおいても投資家に受け入れられないだろうし,そもそもJ-Nomadがそうした企業は事前に排除することになる。要は,我々のような証券取引所が上場の数値基準を一律に設けるのはなしにして,代わりにJ-Nomadが上場企業の質を確保するようにしようということだ。

 ただし,そうはいっても現在の他の証券取引市場は近年,上場のハードルや上場後のランニング・コストがあまりに高くなってしまっている傾向がある。さらに新規株式公開(IPO)時には無事に資金を調達できても,その後,株価が下落するなどで,継続的に資金調達ができない企業もある。TOKYO AIMでは上場後もJ-Nomadが継続的に上場企業をサポートすることで,継続的に資金を調達できる場となることを目指している。

――J-Nomadには誰がなるのか?

伊藤氏 基本的には,上場の際の主幹事証券を務める証券会社が候補になるだろう。J-Nomadは,従来,東証の上場部が行ってきた上場企業の審査を担当する。上場の申請企業が上場の適格性を満たしているか,上場後は重要事実について適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)が行われているかなどについて監視する。さらにJ-Nomadは当該企業についてのアナリスト・レポートが発行されるよう支援したり,M&Aなどについても助言したりする。仮にJ-Nomadとの契約が切れてしまった場合,その企業は上場廃止になる。

 こうしたJ-Nomadの仕組みは,TOKYO AIMを共同で運営するLSEの仕組みを参考にした。LSEは1995年にロンドンで「AIM(Alternative Investment Market)」と呼ぶ証券取引市場を開設しており,そこで「Nomad(nominated adviser)」と呼ぶ指定アドバイザー制度を設けている。LSEのAIMもTOKYO AIMと同じく,上場に当たって株主数や時価総額などの数値基準を設けておらず,代わりにNomadが上場企業の質を確保する仕組みになっている。TOKYO AIMのJ-Nomadはこれに類似したものだ。

――プロ向け市場とは,具体的にはどういうことか?