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東証の伊藤豊氏。同氏は財務省から出向する形で,TOKYO AIMの設立を主導している。カネボウやダイエーなどの経営再建に貢献した産業再生機構にも出向した経験がある。
東証の伊藤豊氏。同氏は財務省から出向する形で,TOKYO AIMの設立を主導している。カネボウやダイエーなどの経営再建に貢献した産業再生機構にも出向した経験がある。
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――プロ向け市場とは,具体的にはどういうことか?

伊藤氏 同じ金融商品を販売するにしても,買い手である投資家がプロなのかアマチュアなのかによって,売る側の説明義務は変わってくる。個人投資家などのアマチュア向けであれば多くの説明資料を用意し,一定の時間を掛けて説明する必要があるが,相手がプロであればより簡素な説明で足りる。上場する企業にとっては効率的ということだ。

 誰がプロの投資家なのかという定義は,日本では2007年9月の金融商品取引法の施行により「特定投資家(specified investors)」という規定ができた。TOKYO AIMはこの特定投資家だけが参加できる市場だ。さらに2008年12月の金商法改正により,特定投資家だけが参加できる証券取引市場,いわゆる「プロ向け市場」の制度(法律)ができ,TOKYO AIMはこの制度を活用している。

 特定投資家とは具体的には,生命保険や年金基金などの機関投資家(金商法上の「適格機関投資家(qualified institutional investors)」)に加えて,資本金5億円以上の企業,その他法人などが対象になる。個人についても,純資産および金融資産がいずれも3億円以上で,取引履歴が1年以上であれば特定投資家になれるため,TOKYO AIMで株式を売買できる。純資産が3億円を下回るような一般の個人投資家はTOKYO AIMには参加できない。

――どのような企業が上場の候補になるのか?

伊藤氏 上場コストを低減したといっても,創業直後のシード段階のベンチャー企業が上場するのは現実的ではないだろう。TOKYO AIMに上場するには,監査法人による直前年度の監査証明も必要になる。基本的には,ベンチャー・キャピタル(VC)が数社,株主として入っており,そこからさらに資金調達を拡大しようとする企業が対象になるだろう。レイター段階のVCが入ってくる段階が相当する。当面は東証マザーズなど他の市場への上場準備を既に進めていた企業が,TOKYO AIMへの上場候補になるだろう。

 TOKYO AIMには株主数の制限がないため,極論すれば株主数が1人の企業の上場もありうる編集部注)。LSEのAIMでは,実際にこうした事例もある。また,上場コストが既存の市場より低いため,直近では資金調達の必要がない若いベンチャー企業が,企業の知名度を高めるために先に上場だけ行うという使い方も可能になる。上場によって事前に知名度を高めておき,資金が必要になった段階で市場を通じて機動的に資金調達をするという利用方法だ。

編集部注)例えば,東証マザーズでは上場時の株主数が300人以上という規定がある

――TOKYO AIMでは海外,特にアジア地域のベンチャー企業の上場も呼び込む狙いのようだ。海外のベンチャー企業がTOKYO AIMに上場するメリットとは何か?

伊藤氏 海外企業については,資金や技術,販売など何らかの形で日本と関わりを持つ,あるいはこれから持とうとするベンチャー企業が上場の対象となるだろう。日本の事業会社と提携したり,日本市場で自ら事業を展開したりする企業などだ。

 TOKYO AIMでは,こうした海外のベンチャー企業が上場しやすいよう,情報開示の言語も日本語だけに限定せず,英語でも可能とした。また会計基準についても,東証1部/2部や東証マザーズでは日本の会計基準に準じて開示する必要があるが,TOKYO AIMでは国際会計基準や米国基準なども受け付ける。さらにJ-Nomadや公認会計士が認めた独自の会計基準での開示も可能だ。

――競合となる証券取引市場は?

伊藤氏 アジア地域について言えば,シンガポールや香港にもTOKYO AIMと似た仕組みの証券取引市場が立ち上がっている。ただし,いずれも設立から1年程度だ。TOKYO AIMは先行して成功したLSEのノウハウを吸収することで,十分挽回は可能と見ている

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