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図1 LEDなどを照明に使った「プロント品川店」店内の様子。左奥の柱を上から照らしているのがLED照明。
図1 LEDなどを照明に使った「プロント品川店」店内の様子。左奥の柱を上から照らしているのがLED照明。
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図2 住友林業の「大分ショールーム及び事務所」のショールームの様子。蛍光灯を使った間接照明など,複数の光源で室内を明るくする。食事中,テレビ視聴中など,生活シーンに合わせて各照明を点灯することで,消費電力を削減する。
図2 住友林業の「大分ショールーム及び事務所」のショールームの様子。蛍光灯を使った間接照明など,複数の光源で室内を明るくする。食事中,テレビ視聴中など,生活シーンに合わせて各照明を点灯することで,消費電力を削減する。
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 環境省は消費電力を抑えた照明の普及に向けて,「省エネ照明モデル事業」12件を採択した(Tech-On!関連記事)。小売店舗を中心に省エネ照明の計画を募集,省エネ照明の設計について補助金を出し,方法や実効値を公表する。省エネ照明の導入を検討する事業者へ参考データを示すことで,普及を促進しようという取り組みだ。

 初めての取り組みとなる今回,応募した企業は省エネ照明に対して,何を期待しているのか。また,省エネ照明の導入に際した課題は何なのか。今回採択された12社のうち,カフェ兼バーを展開するプロントコーポレーション 代表取締役 社長の竹村典彦氏と,住宅を手掛ける住友林業 住宅事業本部 商品開発部長の中嶋一郎氏に話を聞いた。(聞き手=宇野 麻由子,日経エレクトロニクス)

――外食産業では,もともと店舗運営する上でさまざまなコスト削減に努めていると認識している。照明については,どのような取り組みがあるのか。

プロントの竹村氏 我々は,昼はカフェ,夜はバーという業態を採用しているため,時間帯に応じた照明を運用してきた。バーの時間帯は,照明を抑えて雰囲気を出しつつ消費電力も抑える。具体的には,テーブル上の料理に当てるスポットと,雰囲気を演出するための間接照明を使っている。

 今回の省エネ照明では,スポットに50Wのハロゲン灯を,間接照明にLED照明を採用した。この結果,最大出力で比べた場合に従来に比べて約40%の消費電力削減を実現できる見込みだ。

 照明の消費電力を直接抑えられるだけでなく,空調の効率向上によって夏場の冷房コストも下げられそうだ。照明の熱の影響による対流がなくなるので,エアコンや給排気用ファンの稼働率を抑えられる。

 今後展開する新店舗について,すべて今回の省エネ照明の概念を導入する予定だ。

――省エネ照明を設計するに当たり,何がこれまでの問題点として浮かび上がったのか。

プロントの竹村氏 実は,照明の無駄が多かったということが分かった。従来の店舗照明では,実現できる雰囲気の幅を広げようと,設置灯数を多くし過ぎていた。今回は1灯1灯の役割をよく考え,用途を見極めることで,必要十分な灯数に抑えた。

――LEDとハロゲン灯について,どういった使い分けを考えたのか。

プロントの竹村氏 LEDは,照度は高いが演色性は悪い。そこで,壁を照らす間接照明に用いた。柱の素材の雰囲気をうまく表現できる。照明器具は日本メーカーのものを採用したが,LEDは中国メーカーの製品を採用した。発光面が広いからだ。日本メーカーのLEDは発光面が小さく,光を拡散させると中央の照度が落ちてしまうという課題があった。採用したLEDは,同じ照度のハロゲン灯と比べても見劣りしない。消費電力は50Wから4Wへと大幅に削減できる。

 日本メーカーのLEDではここ1年,照度などについて調光機能を持つものが提案され始めている。大いに期待している。

――省エネ照明の普及に向けて,何が必要か。

プロントの竹村氏 デザイナーの省エネ照明に対する意識だろう。照明器具メーカーが省エネ照明を実現するのは難しい。立場上,器具の数を多く設置する傾向にあるからだ。それに比べて,デザイナーや大手建設業者の設計担当者が必ず省エネの観点から照明設計に取り組むようになれば,照度など照明について知識のない発注者が依頼しても省エネ照明が実現できる。ぜひ,耐震設計などと同じように取り組んでもらいたい。

 外食産業に省エネ照明を普及させるのは,意外と簡単だと思う。日本で有名デザイナーとされる人たちは,わずか25~50人くらい。彼らが大半のレストランなどを設計している。有名デザイナーが率先して省エネ照明を採用するようになれば,一気に普及するだろう。

住宅でのLED照明はまだ高価

――住友林業のモデル事業は,事務所と併設するモデル・ルームを対象としている。今回のモデル事業ではLEDを採用する提案が多かった中,住友林業ではほとんどLEDを使っていないのはなぜか。

住友林業の中嶋氏 今回のモデル事業では全体で消費電力を3割削減できることが目標とされており,高効率蛍光灯の採用し,灯数を従来の約半分に削減することで,目標を達成できると見込めた。

 LEDは入り口部分と受付部分にのみ採用した。我々の事業は,住宅での省エネ照明の実現に向け,一般消費者に対して提案している。LEDが低価格であれば全体に採用することを検討できたが,まだLEDはコストが高い。消費電力は約4割削減でき長寿命という特徴はあるが,価格は蛍光灯の5倍になってしまう。現状でも,吹き抜け部分など交換が難しい照明にとっては10~20年使えるLEDは有効だ。ユーザーに価値をアピールしやすい。

 LEDの仕様については,今まで低かった演色性を高めた製品が出回り始めたので,注目している。2015年には発光効率も蛍光灯を超えるというロードマップも示されており,今後導入が進むと考えている。

――現時点の住宅の場合,省エネ照明にはどういったものが有効になるのか。

住友林業の中嶋氏 生活シーンごとに照明を変えることで,消費電力削減と快適性の維持を両立することが重要だ。そのためには,部屋を天井のシーリング・ライト1灯で隅々まで均一な明るさに照らす「一室一灯」を見直す必要がある。

 例えば,ベース照明は1灯当たり15Wの電球型蛍光灯を使ったスタンド3灯で実現できる。間接照明により壁を照らせば,明るさ感が出せるからだ。

 現状の日本の部屋は明る過ぎる。しかし,いくら「部屋の天井に照明がなくても大丈夫」と言われても,消費者は図面だけでは納得できないだろう。また,設計者も実際の部屋を作ってから「暗い」とクレームが出されることを恐れている。そこで,今回のような省エネ照明を実現するモデル・ルームで,ぜひ省エネ照明を体感してほしい。明るさの感じ方は人によって違う。その人がこの明るさで大丈夫,快適だと体感できれば,実現に踏み切れるはずだ。

 今後,新しい発光源が開発されても,「生活シーンに合わせた照明にする」という発想の重要性は変わらない。

――有機ELについては,どのように考えているか。

住友林業の中嶋氏 建材の中に仕込むことができるという点で,大いに期待している。発光する曲面を実現できるという点でも,魅力的だ。インテリアに対する影響が大きく,実用化されるのが楽しみだ。