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 セントラル硝子と米IBM Corp.は,世界規模で広がる飲料水不足の解消に向けた新たな水処理膜材料を開発した。水の脱塩やヒ素などの汚染物質の除去を効果的に行える。IBM社の研究拠点に派遣されているセントラル硝子の研究員とIBM社の研究員が共同で開発した。

 水の膜分離は,淡水化などの際のエネルギー効率に優れた分離方法として知られる。現在,使用されている水処理膜材料は,塩素殺菌の際に使われることが多い塩素分に対する耐性が不十分である。そこで,今回の共同開発では,塩素耐性に優れた膜を開発すること,および,今日,世界中で問題となっている水分中のヒ素を取り除くために塩基性条件下で高い性能を示す膜を開発することを目標としてきたという。

 両社が開発した水処理膜材料は,イオン性の疎水物質を使用していることから,塩基性の条件下で性能が大きく変化し親水性を示す。すなわち,このフッ素化合物を用いた水処理膜材料を用いることで,水の透過量を高透過量から低透過量まで適切に制御できるという。加えて,塩基性の条件下でヒ素はイオン化され,逆浸透膜により比較的容易に除去できることから,この水処理膜材料を使用することで汚染水から安全な飲料水のみを取り出せるとする。

 世界では,現在,5人に1人は安全な水を飲める環境にないという。そして,世界保健機構によれば,ヒ素に汚染された飲料水が1990年代から世界中で健康上の深刻な問題を引き起こしているという。ヒ素は体内に蓄積されるため,ヒ素に汚染された水で長期間生活することを強いられる国では,10人に1人が,ヒ素が原因のがんにより死亡しているという。今回の両社の開発成果は,こうした事態の打開に寄与する可能性がある。