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 キリンホールディングスのフロンティア技術研究所(横浜市)は,グルコースからバイオプラスチックの原料となるL-乳酸を高効率に産生する酵母を,キャンディダ・ユティリス酵母から育種することに成功した。工業的に利用しやすいキャンディダ・ユティリス酵母を宿主として,高純度のL-乳酸を高収率に作る性質をもった酵母の作製に成功したことで,バイオプラスチックの生産性向上が期待できるという。

 一般にポリ乳酸は,原料となる乳酸の光学純度*1が高いほど耐熱性などが向上する。そのため,本来はほとんど乳酸を産生しない酵母に乳酸脱水素酵素*2の遺伝子(LDH遺伝子)を導入して,グルコースなどの糖からL-乳酸を生成させる技術の開発が進んでいる。しかし,酵母には糖からエタノールを生成する性質があるため,乳酸の生成を阻害するという課題があった。

 そこで同社は,この乳酸産生酵母の宿主としてキャンディダ・ユティリス酵母を採用。エタノールの生成を抑えながら「世界最高レベル」(同社)の効率でL-乳酸を産生する株の育種に成功した。

 キャンディダ・ユティリス酵母は,増殖力や発酵力に優れ,調味料の生産にも使われるものだ。だが,高次倍数体(構成するゲノムが2セット以上ある細胞)のため,エタノールを生成する遺伝子を完全に破壊するには,高いレベルの遺伝子操作技術が必要とされてきた。

 同社は今回,エタノールの生成にかかわるピルビン酸脱炭酸酵素*3の遺伝子を複数回にわたって脱落させることで,エタノールを全く生成しない酵母を作製。この酵母にウシ由来のL-LDH遺伝子を導入することにより,乳酸産生酵母(Pj0957株)を作り出した。この菌株は,約100g/Lのグルコースを含む栄養培地で33時間後にほぼすべての糖を消費し,変換効率95%以上の効率で光学純度が99.9%以上のL-乳酸を生産する。

*1 乳酸には光学異性体(L-乳酸とD-乳酸)があり,一方の比率が高いほど光学純度が高い。光学純度の高いL-乳酸を重合させたポリ乳酸を,D-乳酸を重合させたポリ乳酸と混合することで耐久性に優れたプラスチックができる。
*2 グルコースを代謝する過程で生成されたピルビン酸を脱水素して乳酸に変換する働きを持つ酵素。
*3 嫌気条件下でピルビン酸をアセトアルデヒドに変換する酵素。アセトアルデヒドが還元されてエタノールを生成する。