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 警察庁は2009年4月9日,幼児2人を自転車に乗せて走る「3人乗り」について,一定の安全基準を満たした自転車に限って認める方向で,検討委員会(座長・青山学院大学教授の小川武史氏)がまとめた「幼児2人同乗用自転車に求められる要件」を公表した。早ければ同年7月には3人乗りが解禁される見通しだ。一部の自転車メーカーは,自転車産業振興協会が2008年5月までに募集していた助成金制度を活用し,安全性の高い3人乗り自転車をすでに完成させつつある。しかし,そこで壁になっているのは,基準の達成よりもむしろ「低価格化」のようだ。

 現在,メーカーが想定している価格は安くても6万円弱。消費者からは「これでは高すぎる」との声が上がっている。しかし,自転車メーカーにとっても,価格を下げたくとも下げられない理由がある。

 一つは,安全性を高めるために必要な「新部品の採用」だ。例えば,丸石サイクル(埼玉県吉川市)は,3人乗り自転車専用の幼児用座席(同乗器)を新たに開発した。自転車本体の設計は,幼児1人を載せて走れる既存製品の設計を改良する形でコストを節減。しかし,同乗器は,自動車産業振興協会が提示した条件を満たすために形状を変える必要があった。同乗器は樹脂を射出成形して造る。そのため,新たな金型を作成しなければならず,完成品の値段への反映は避けられない。同社が現在,想定している価格は7万円前後だ。

 また,3人乗り自転車市場の大きさも,低価格化の壁になっている。自転車産業振興協会が集計している「自転車生産動態・輸出入統計」によると,2008年の国内向け台数(生産数+輸入数)は約1013万台。そのうち,「ママチャリ」と呼ばれる軽快車の台数は約475万台だ。今回の3人乗り自転車は幼児2人を乗せるもので,利用者は基本的に小さな幼児2人のいる家庭と想定される。つまり,3人乗り自転車の市場は475万台よりもかなり小さいと考えられるのだ。市場が大きければ,新設計の部品を採用しても価格への影響は小さくなるが,そうもいかない。

 丸石サイクルでは「新しい同乗器を他の機種にも採用するなどして,低価格化に向けて努力したい」と話している。3人乗り自転車が解禁されても,メーカー各社にとっては低価格化が悩みの種になりそうだ。なお,自転車産業振興協会の助成金制度を活用したメーカーらの開発内容の詳細は,『日経ものづくり』の2009年5月号に掲載する。