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出典:日経エレクトロニクス,2009年5月4日号,pp.10-11(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
ソニーが撤退する動画配信サービス「eyeVio」
ソニーが撤退する動画配信サービス「eyeVio」

 2年前,経営トップの手で大々的に発表されたソニーの動画共有サービス「eyeVio」。同社は動画編集サイト運営のスプラシアにサービスを譲渡し,2009年5月末に撤退する。デジタル家電と投稿動画の連携サービスを模索したが,インターネット広告による収益化が頓挫した。「“ソニー色”が出てしまい,広告メディアとして中立性が保てない」(ソニー広報センター)。同社は同年1月にも動画配信サービス「branco」を閉じたばかり。ソニーの撤退は,デジタル家電とネット・サービスの連携の難しさと同時に,動画配信ビジネス自体が岐路に立つ現状を示唆する。

 多くの動画配信サービスが収益化に苦しむ中,2009年4月には大手企業による再編や,新たな収益源を模索する動きが相次いだ(図1)。動画配信は,テレビを中心とするデジタル家電のキラー・アプリと目されるだけに,エレクトロニクス・メーカーにとって,その動向は人ごとではない。

図1 ネット動画配信に淘汰/再編の動き
図1 ネット動画配信に淘汰/再編の動き
2009年4月,収益化に苦戦する大手の動画配信サービスで事業の譲渡や統合,新たな収益源を模索する動きが相次いだ。

規模拡大にひた走るヤフー

 動画配信の苦戦を象徴するのが,ヤフーによるGyaOの経営権取得だ。GyaOはUSEN子会社で無料動画配信の草分け。ヤフーは2009年4月末に GyaO株式の51%を約5億3000万円で取得し,子会社化した。同年秋をメドに動画配信サービス「Yahoo!動画」と「GyaO」を統合する。

 GyaOは2200万人の登録会員を抱える。パソコンに加え,専用セットトップボックスを使ってテレビで動画配信を楽しむ利用者の獲得にも力を入れていた。だが,一貫して赤字続きで,ライバルだったヤフーを頼った形だ。ただ,引き取ったヤフーも「動画配信事業でもうけているとは言えない」(同社の井上雅博社長)。

 なぜか。コンテンツ調達や配信インフラの運用に掛かるコストの増大に,広告やコンテンツ課金による収入拡大が追い付かないことが大きい。ヤフーは,規模の拡大による配信インフラの統合やコンテンツ調達の共通化などを軸にビジネスモデルを再構築し,利用者増が収益につながらない悪循環から脱却する考えだ。

 ヤフーは,次なる配信先と期待するテレビにも布石を打つ。2009年4月に将来の動画配信を見据えたテレビ向けポータル・サイトを本格的に立ち上げた。これに先立ち,テレビや携帯電話機,カーナビ向けサービスの開発部門を統合。ネット家電分野の開発リソースを一つにまとめ,機器間の連携を加速する。