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東京大学IRT研究機構が開発した「キッチンロボット」。流し台にロボット・アームを取り付けた構造で,流し台に置かれた食器をつかみ,水ですすいでから食洗機に収納できる。写真は同機構提供
東京大学IRT研究機構が開発した「キッチンロボット」。流し台にロボット・アームを取り付けた構造で,流し台に置かれた食器をつかみ,水ですすいでから食洗機に収納できる。写真は同機構提供
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キッチンロボットのために開発したMEMS触覚センサ。柔軟なゴムの中にピエゾ抵抗カンチ・レバーを埋め込んでおり,せん断方向の力を精度高く検出する。写真は東京大学IRT研究機構提供
キッチンロボットのために開発したMEMS触覚センサ。柔軟なゴムの中にピエゾ抵抗カンチ・レバーを埋め込んでおり,せん断方向の力を精度高く検出する。写真は東京大学IRT研究機構提供
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キッチンロボットのハンド部分には近接覚センサ,圧力センサ,触覚センサを配置して,力を入れすぎて食器を割ったり,逆に弱すぎて食器を落としたりしないように,ハンドの握力を調節できるようにしている。写真は東京大学IRT研究機構提供
キッチンロボットのハンド部分には近接覚センサ,圧力センサ,触覚センサを配置して,力を入れすぎて食器を割ったり,逆に弱すぎて食器を落としたりしないように,ハンドの握力を調節できるようにしている。写真は東京大学IRT研究機構提供
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 日経エレクトロニクスは2009年5月27日(水)~5月28日(木)に東京・目黒の目黒雅叙園を会場に,「センサ・シンポジウム 2009」を開催する。センサの使い手と作り手がに会し,今後のセンサ技術や新たなセンサの応用を探る趣旨で,日経エレクトロニクスが開催しているイベントである。今回のセンサ・シンポジウムでは,今後のセンサ応用の核となる技術テーマとして,「家庭用ロボット」「エネルギー・ハーベスティング技術」「先端ユーザー・インタフェース」の三つを選び,2日間で,13講演を企画した。

センサ・シンポジウム 2009 開催概要
http://techon.nikkeibp.co.jp/seminar/090527a.html

新構造のMEMSセンサで食器の「滑り」を検知

 5月27日午前中の「ロボット セッション」ではまず,全体の基調講演を兼ねて,東京大学 IRT研究機構を率いる機構長の下山勲氏が講演する。同機構(http://www.irt.i.u-tokyo.ac.jp/)は「自動車、コンピュータに続く新たな基幹産業として期待されるロボット産業の発展のために、IRT(ITとRT(Robot Technology)の融合技術)イノベーションの創出を強力に推し進める」ことを目的に2008年4月1日に設立された。トヨタ自動車やパナソニック,富士通研究所など民間企業7社が運営に参加しているのも特徴だ。これらの企業との共同研究によって,「2015年には一家に一台のロボットを普及させ,10兆円規模の市場を創出する」(下山氏)ことを目指す(Tech-On!関連記事1)。こうしたビジョンに向け,その導入シナリオや市場規模予測,家庭用ロボットの実現のために求められているセンサなどのデバイスについて,下山氏の考えが聞けるはずだ。

 家庭用ロボットの実現には新たなセンサ技術が必要になる。例えば,同機構が2008年12月に発表(PDFの発表資料)した「キッチンロボット」は,流し台に置かれた食器を手探りで探し,水ですすいでから,食洗機に運ぶことができるロボット・アーム付き流し台である。この機能を実現するために,アーム先端のハンド部に,近接覚センサ,圧力センサ,触覚センサを配置した。これらにより力を入れすぎて食器を割ったり,逆に弱すぎて食器を落としたりしないように,ハンドの握力を正確に調節できるようにしている。

 特に重要なのが「食器の滑り」を検出する触覚センサである。このロボットのために開発されたもので,MEMS技術で形成した微少なピエゾ抵抗カンチ・レバーを,柔軟なゴム材料に埋めた構造をしており,「垂直方向とせん断方向の力を高精度で検出できる」(下山氏)。この結果,ハンドの把持力を食器が滑る直前まで弱められ,ロボット・アームが食器の表面をなぞるような動作が可能になったという。

 このキッチンロボットの技術的な詳細や動作アルゴリズム,開発したセンサの構造については,下山氏に続いて講演するパナソニック 生産革新本部 ロボット事業推進センター 主任技師の水野修氏が詳しく説明する。パナソニックはIRT研究機構の運営に参画する1社で,今回のキッチンロボットを共同開発した。水野氏の講演ではさらに,家庭用ロボットの実用化に向けた同社の考えや,今後必要になるセンサ技術についても触れる。

 「ロボットセッション」ではパナソニックの水野氏に続き,トヨタ自動車 パートナーロボット部 高木宗谷氏が講演する。トヨタ自動車は,高齢者の介護支援などを目的とした「パートナーロボット」をIRT研究機構と共同開発している。高木氏の講演では,同社が開発の重点を置く(1)家庭内での家事支援,(2)介護・医療支援,(3)製造ものづくり支援,(4)近距離パーソナル移動支援の4領域におけるパートナーロボットの最近の開発事例を交えながら,ロボット実用化へ向けた取り組みと課題について解説する。