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 トヨタ自動車は,2009年度(2009年4月~2010年3月)の原価改善額の目標を3400億円としていることを明らかにした(関連記事)。2008年度の実績は±0だったが,これまで行っていた収益改善策を強化するほか,鋼材など原材料価格が低下していることを受け,大幅な改善効果を見込む。

±0から一転

 トヨタ自動車の「原価改善の努力」は,ここ数年減少傾向にあり,2008年度はとうとう±0まで落ち込んでいた。だが,2009年度は3400億円の原価改善を目指すという。そのための収益改善策として同社が掲げているのは,(1)「緊急VA活動」の対象車種数を15から50に拡大(2)メンテナンスの効率化などによる「工場原価」改善(3)新モデル切り替えに伴う原価改善---の三つである。

「原価改善の努力」の推移(通期)
2002年度をピークに減少傾向にある。
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 このうち(1)の緊急VA活動は,既に発売したモデルに対する原価低減を指す。対象車種数の増加による上積みを期待できるのは確かだが,一般には発売後のモデルに対する原価低減活動に劇的な効果は見込めない。もし劇的な効果を見込むとしたら,それは(3)の新モデル切り替えに伴う原価改善の方である。例えば,2009年5月に日本で公開予定の新型「プリウス」では,従来モデル比で「原価を30%削減した」(同社代表取締役社長の渡辺捷昭氏)という。だが,同社では既にこのような活動を「VI活動」として2005年ごろから進めており,これに関しても2008年度と2009年度で状況が大幅に変わるというわけではない。とすると,3400億円もの原価改善を本当に実現できるのかという疑問が浮上してくる。

鋼材価格の低下に期待

 原価改善の“切り札”となり得るのは,鋼材など原材料価格の低下である。トヨタ自動車の「原価改善の努力」が減少傾向にあったのは,近年の原材料価格の高騰による影響が少なくない。しかし,2008年秋ごろから鋼材の市中価格は急速に低下しつつあり,同社と鉄鋼メーカー各社との価格交渉も2008年度比で1万5000円/tの値下げという形で落ち着いた。鋼材をはじめとする原材料価格の低下は,既存モデルにも新モデルにも効いてくる。原価改善額の3400億円のうち原材料価格の低下による効果がどれほどなのかトヨタ自動車は明らかにしていないが,かなりの部分を占めるとみられる。

「原価改善の努力」と鋼材市中価格の推移(四半期)
「原価改善の努力」と原材料価格の相関は高いように見える。トヨタ自動車は,市中価格で鋼材を購入しているわけではなく,鉄鋼メーカー各社と個別に交渉しているが,価格推移の傾向としてはほぼ同じと考えられる。
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「原価改善の努力」と電気銅,アルミ二次合金地金(ダイカスト用)の推移(四半期)
銅やアルミニウムといった素材の価格も鋼材と同様の傾向を示しており,自動車の原価に大きな影響を及ぼしているとみられる。
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 とはいえ,収益構造が原材料価格の変動の影響を受けやすいことに変わりはない。今後しばらくは,緊急VA活動という足下の改善で急場をしのぎつつ,VI活動という中・長期的視野に基づいた活動で収益構造の強化を図っていくことになりそうだ。