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産総研が開発した薄膜型熱電変換素子。2cm角で厚さが1μm。p型とn型半導体が交互に並んでいる構造になっている。
産総研が開発した薄膜型熱電変換素子。2cm角で厚さが1μm。p型とn型半導体が交互に並んでいる構造になっている。
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 エネルギー・ハーベスティング(電力回収,あるいは電力収穫)技術が世界の注目を集め始めた。2009年6月には,英国ケンブリッジや米国シカゴでこのテーマを主要議題の一つとするシンポジウムが相次いで開かれる予定になっている。

 この技術は,熱や振動,太陽光,テレビやラジオ用の電波など環境中に遍在しているエネルギーを収穫・回収して電源として利用する技術である。得られる電力は素子単位では必ずしも大きくないが,マイコンや無線通信の消費電力が小さくなってきたことから応用範囲が急速に広がりつつある。重要な応用の一つがセンサ・ネットワークに使われるセンサである。

 一般にセンサ1個1個は,電池などのわずかな電力で数カ月~数年動作するほど低消費電力だ。ところが,それが多数になってくると電池の寿命の管理や交換の手間が無視できないほどに増大する。一方,エネルギー・ハーベスティング技術を使えば,1次電池を不要とするセンサ・ネットワークが実現でき,電池の交換作業などが不要になるのである。ただし,微小な電力をより有効に活用するために,個々の発電技術と共に,電力の最適な配分などの管理技術,2次電池技術,低消費電力のIC技術などシステム全体での技術開発が進められている。

 欧州ではビル管理向けのセンサにこれらの技術が普及し始めている。ドイツSiemens AGから生まれたEnOcean GmbHは,こうしたセンサの企画や技術仕様の業界標準作りで世界をリードする存在。6月に英国で開催される,エネルギー・ハーベスティングを主題とするシンポジウムでの同社の講演タイトルは「Energy Harvesting 3.0」である。3.0どころか「1.0」もほとんど始まっていない日本は,この技術の応用で大きく出遅れているのが現状だ。

次世代電源,発電技術が目白押し

 エネルギー・ハーベスティング技術の個々の発電技術は,実は次世代の電源技術,発電技術として注目を浴びているものばかりである。センサはその最初の応用例というわけだ。開発の最前線では,センサはもちろんそれ以外への応用も見えてくる。

 例えば,産業技術総合研究所,エネルギー技術研究部門 熱電変換グループ 研究グループ長の小原 春彦氏らは,最近,従来の熱電変換素子のイメージを覆す,2cm角で厚さ1μmという超薄型の発電素子を開発した。材料はやや脆いといわれるBiTe系ながら,非常に薄いために「フレキシブルにすることも可能」(小原氏)という。数℃~100℃前後の比較的低い温度差でも発電するため,身近にある熱源を利用できる。このため,人間の体温を熱源とする「体温発電」などの応用や,各種熱センサとしての応用が見込めるという。

 東京大学 大学院 工学系研究科 機械工学専攻 准教授の鈴木 雄二氏は,「エレクトレット」と呼ぶ樹脂などに電荷を注入した素子を用いて,振動から電力を取り出す技術の研究開発をオムロンなどと共同で進めている(関連記事)。振動による発電技術には,磁石の振動を利用した電磁誘導などもあるが「エレクトレットなどの静電容量を用いた技術は起電力が大きいのが特徴。振幅が小さい領域では,電磁誘導より多くの電力を取り出せる」(鈴木氏)という。

 振動は熱以上に環境に遍在している。自動車や航空機といった乗り物のほか,人間自体が比較的よいエネルギー源になる可能性がある。振動とは少し違うが,「歩いている人間が減速する際にヒザで消費されるエネルギー(回生エネルギー)は4~5Wという研究がある」(鈴木氏)。

 鈴木氏はMEMS技術で作製した微小バネと組み合わせた発電素子などを開発済み。センサ以外への応用は例えば,補聴器や心臓ペースメーカーに給電するといったことが可能という。

Intel社は,電波から磁気結合共鳴までを研究

 米University of Washingtonの研究者で,米シアトルにある米Intel Corp.,Intel Researchで「ワイヤレス電源」について研究を進めているAlanson Sample氏らは,2009年1月に高い効率の整流回路などを開発することで,テレビ塔が放射する電波をセンサに利用可能であることを示した(関連記事)。それだけでなく,米MIT ProfessorのMarin Soljacic氏が考案した磁気結合共鳴を利用した電力伝送技術の実用化に向けた開発なども進めている(関連記事)。

 2009年5月27日~28日に,日経エレクトロニクスが主催で「センサ・シンポジウム 2009」を開催する。6月の英米でのシンポジウムに先駆けて,上記のEnOcean社,産総研,東京大学,Intel社の研究者が一同に会する「エネルギー・ハーベスティング・セッション」を27日に企画した。

▼センサ・シンポジウム 2009の開催概要
  • 開催日:5月27日(水)~5月28日(木)
  • 時間:27日 10:00~18:30,28日 10:00~16:50 (開場9:30)予定
  • 会場:目黒雅叙園
  • 主催:日経エレクトロニクス
  • 同時開催:MEMS International 2009(主催:NIKKEI MICRODEVICES)
  • 受講料:一般価格 62,000円
        早期割引価格【5月19日(火)まで】 58,000円
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