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左の写真は作製したPEDOT/PSS薄膜断面のSEM写真。右の写真は,左が今回作製したPEDOT/PSS薄膜の外観で膜厚93nm,シート抵抗244Ω/cm2,透過率89%。右は市販されている高品質ITOガラスの外観で,膜厚23nm,シート抵抗10Ω/cm2,透過率81%
左の写真は作製したPEDOT/PSS薄膜断面のSEM写真。右の写真は,左が今回作製したPEDOT/PSS薄膜の外観で膜厚93nm,シート抵抗244Ω/cm2,透過率89%。右は市販されている高品質ITOガラスの外観で,膜厚23nm,シート抵抗10Ω/cm2,透過率81%
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 山梨大学大学院医学工学総合研究部の厳虎氏らの研究グループは,透過率89%で電導度を443S/cmまで高めた有機透明薄膜の作製に成功した。ディスプレイやタッチパネル向けの透明電極に使われているITO(酸化インジウムスズ)の代替を狙う。これまで発表されている有機薄膜の中では,透明度を90%近く高めたものとしてしてはもっとも高い導電性を示すという。

 有機薄膜の組成は,PEDOT/PSS(3,4-エチレンオキシチオフェン/ポリ4-スチレンスルホネート)。PEDOT/PSSそのものは導電性を示すポリマーとして知られているが,これまで導電性と透明性を両立させることは難しかった。薄膜化すると,透明性は上がるが,粒子サイズの違いや粒子間の絶縁層(PSS)の影響で導電性が下がってしまう。そこで,同研究グループは,(1)遠心分離器によってPEDOT/PSSコロイド粒子のサイズを揃える,(2)有機溶媒(エチレングリコール)を添加して絶縁層(PSS)を除去する(溶媒効果)---という2段階のプロセスを採用することによって,透明性と導電性を両立させた。

 同プロセス後,同溶液をスピンコートすることによって,膜厚93nmの有機薄膜を成膜できた(写真参照)。同グループは,さまざまな条件で有機薄膜を作製したが,5000rpmの条件で遠心分離し,エチレングリコールを7%添加した場合に,89%の透過率と443S/cmの電導度が得られた。

 厳氏によると,今後,遠心分離や溶媒効果などのプロセスを最適化することによって,1000S/cm程度まで導電率を上げ,現状のITOの低グレード品を置き換えられるレベルまで特性を上げていきたいという。

 研究成果の詳細は,2009年5月27~29日に開かれる「第58回高分子学会年次大会」(神戸国際会議場)で発表される(講演番号1Pf098)。

注:同大会は新型インフルエンザ問題によって中止された(Tech-On!関連記事