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 東洋紡総合研究所は,有機溶媒に可溶で,熱線膨張係数がシリコン並みに低い新しいポリイミドを開発した。狙う用途は半導体素子用の層間絶縁膜やシリコンウエハーのバッファーコートなど。近年,半導体回路の微細化やシリコンウエハーの薄膜化が進んでおり,シリコンチップとポリイミドフィルムの熱線膨張係数の違いによるIC実装時の位置ずれやシリコンチップが反る問題が顕在化しており,そうした用途に有望だと同社は見ている。

 現在供給されている溶媒に不溶なポリイミドは,低い熱線膨張係数のものも登場しているものの,前駆体のポリアミド酸の状態で保管し,成膜後に350℃以上という高温でイミド化反応を起こさせている。不安定なポリアミド酸を低温で保管する必要があり,成膜・加工プロセスに負荷がかかっていた。また例えばシリコンウエハーのバッファーコートに使うと350℃という高温から室温に戻すために残留応力が残って反りが問題になっていた。一方,溶媒に可溶なポリイミドも開発されているが,可溶化のために分子骨格を柔らかくしているために熱線膨張係数が20~80ppm/Kと高くなってしまうというトレードオフを抱えている。

 今回東洋紡は,溶媒に可溶でありながら,熱線膨張係数を下げることに成功した。熱線膨張係数を下げるには,分子構造を剛直にする必要があるが,一般には剛直にすると溶媒に不溶になる。そこで同社は,「剛直分子の隙間に溶媒が入り込むような分子設計にして可溶にした」と言うが,分子構造などは一切明らかにしていない。

 新ポリイミドは,室温では溶媒に溶けないが,120℃でNMP(N-メチル-2-ピロリドン)に溶解するため,成膜できる。乾燥後に得られたポリイミドフィルムは,5%熱分解温度が500℃以上,ガラス転移温度が400℃以上と高い耐熱性を示した。また,50~200℃の平均熱線膨張係数はシリコンと同レベルの3ppmと低い値となった。

 なお,同社は同研究成果の詳細を,「第58回高分子学会年次大会」で発表予定であったが,同大会は新型インフルエンザ問題によって中止された(Tech-On!関連記事)。