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 オーストラリアSwinburne University of TechnologyのCentre for Micro-Photonicsは,現在のDVDディスクの寸法に換算すると最大7.2Tバイトを記録できる光ディスクの製造技術を開発した(第一報)。ビットの書き込み位置だけでなく,光の偏波の自由度と波長の自由度も用いて情報を記録する。

 加えて,書き込み速度も将来的には1Gビット/秒まで高速化可能とする。順調に技術開発が進めば,1層で4.7Gバイト,2層で8.54Gバイトを記録できる現行のDVD技術に比べて1000倍前後のデータ容量を備えた光ディスクを実現可能になる。

微細な「アンテナ」を基板にばらまく


 この技術でのデータの書き込み原理は,レーザ光による金属の融解,読み出しの原理は光の反射率の変化の測定である。具体的には,長さが数十nmの棒状の金の粒子「金ナノロッド」をポリビニルの溶媒に溶かし,それをガラス基板上にスピンコートで約1μmの厚さに塗布する。こうすると,記録用の薄膜中には様々な長さや太さの金ナノロッドが様々な方向を向いて分布することになる。

 ここで特定の波長のレーザ光のパルスを照射すると,その波長に合った長さで,しかも偏波の方向と平行な向きの金ナノロッドだけが光に共鳴し,光のエネルギーを吸収して加熱され,融解する。その結果,その金ナノロッドの形状は棒状から球状に変わる。こうして,特定の形状と向きの金ナノロッドの数を減らすことで,データを記録する。無線の世界でダイポール・アンテナの向きを90度変えて伝送容量を2倍にする「偏波多重」という技術があるが,これはその光版の技術といえる。金粒子の変形は不可逆であるため,書き込みは1度切りである。

 一方,データの読み出し時は,書き込み時と同じ波長と偏波を持ち,それでいて強度がはるかに弱いレーザ光のパルスを照射する。すると,金ナノロッドが変形した画素は,変形していない画素に比べて光の反射率が大きく下がる。この反射率の変化を測定してデータを読み出す。

 もう少し詳しく説明すると,読み出し時には,「2光子発光」という光の非線形現象が金ナノロッドで起こりやすい性質を利用する。2光子発光とは,金ナノロッドが光子を2個同時に吸収すると,高いQ値で共鳴現象が起こり,発光する現象。吸収率は偏波や波長に敏感で,しかも光の強さの2乗に比例する。また,金粒子の形状が棒状の場合と球状の場合では,発光輝度が6桁も異なるという。この高い選択性によって高い精度でデータを読み出せることになる。

6枚の絵を同じ薄膜に重ね描き

 Swinburne Universityの研究グループが実際に作製したのは,寸法が100μm×100μmの金ナノロッドをちりばめた薄膜。3波長(色)と互いに独立な2偏波面に対応した,6枚の異なる「絵」を重ね描きし,しかもそれらを独立に読み出せるようにした。

 具体的には,金ナノロッドの寸法を37nm×19nm,50nm×12nm,50nm×8nmと3種類作りわけ,これらに共鳴する光の中心波長をそれぞれ約660nm,約810nm,約960nmとした。ただし,実際には波長が700nm,840nm,980nmといった光を利用した。個々の絵の画素数は75×75で,画素の寸法は1.33μm角である。

 さらに同グループは,このポリビニルの薄膜を10μm厚の透明樹脂層を介して最大10層まで重ねた。「既存の光ディスクのドライブ技術で垂直方向への光の当て分けは十分可能」(論文)。これによってデータ記録密度1.1Tビット/cm3,既存のDVD用ディスクの寸法では1.6Tバイトの記録容量を実現可能という。

 この透明樹脂層の厚さは薄くすることが可能で,しかもデータの多値化技術と組み合わせるなどすれば,最大で7.2Tバイトの記録容量を持つ光ディスクが作製可能だとしている。