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 政府は,米ニューメキシコ州と共同で,スマートグリッドに関する実証研究プロジェクトを実施する。日本側はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が中心となり,電力事業者や蓄電池メーカー,情報通信機器メーカーなどが参加する予定。出力が5MW級のマイクログリッドを立ち上げて,電力技術と情報通信技術を活用することによる電力利用効率化や,再生可能エネルギーの制御,蓄電手法などを実地で検証する予定である。

総計500億円の獲得を目指す


米国南西部にあるニューメキシコ州は,人口は約200万人ほどと少ないが,全米でも屈指の日照量があることから,太陽熱発電などの研究が盛んである。原子力エネルギーや再生可能エネルギーの研究拠点である米ロスアラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)や,米サンディア国立研究所(Sandia National Laboratories)があるほか,州知事が元エネルギー省の長官であるBill Richardson氏であることなどにより,エネルギー政策に熱心に取り組んでいる州である。経済産業省は,2006年ころからロスアラモス研究所と意見交換をするなど関係を深めており,2007年には包括的協力に関する覚書(MOU)を調印していた。水素貯蔵用材料や超伝導新物質評価などの目的で,NEDOや産業技術総合研究所との間でも共同研究が提案されていた。

こうした中,2009年2月にニューメキシコ州側から「Green Grid」という共同研究プロジェクトの提案があった。背景には,米オバマ政権の施策がある。同政権の緊急経済対策「米国再生・再投資法(ARRA:American Recovery and Reinvestment Act)」において,米エネルギー省(DOE)から各州のスマートグリッド・プロジェクトに対して数十億米ドルの予算が投じられることになった。ニューメキシコ州はこのうち500億円程度の予算獲得を目指しており,その受け皿となるプロジェクトが必要だったとみられる。

蓄電技術に期待


ニューメキシコ州が,500億円という強気の予算獲得額を標榜するのは理由がある。まず,州内に米国有数の国立研究所を抱えており,スマートグリッドの研究拠点としてふさわしいと考えていること。次に,現知事が元エネルギー省長官であることから,連邦政府と太いパイプがあると自認すること。そして3番目は,日本と共同研究することで,日本のエネルギー関連技術と連携した高効率のスマートグリッド・システムを構築できると考えていることである。つまりニューメキシコ州は,日本の取り組みに大きく期待しているのだ。

ニューメキシコ州が日本の技術として期待しているものの一つが,蓄電技術である。大型の太陽光発電施設などを構築する際に,大規模な蓄電システムが必要になると見込まれている。大規模な蓄電システムに関しては,日本ではNAS電池やLiイオン2次電池の技術がある。こうした技術の導入に,期待しているとみられる。

ニューメキシコ州の500億円の内訳はこうだ。出力が5MW級のプラントを設け,1200家庭(各戸に3kW)に電源供給するほか,1箇所の学校(500kW),事業所(50~250kW)に接続する。この中には1MW級の太陽光発電を接続し,また2MW級の電力貯蔵システムをつなげる。各戸にはスマートメーターを用いたデマンド・サイド・マネジメントも行なう。費用については,データ収集や分析,テストなどに50億円,5MWの実証プロジェクトに20億円を費やす。こうした実証プロジェクトを25件程度計画しているため,要求総額は500億円規模になるという。

 参加する日本側の期待も大きい。4月中旬に開催された日米共同ワークショップには,日本からNEDOや経済産業省の担当者のほか,東京電力や日本ガイシ,パナソニック,日立製作所,東芝などの担当者も参加した。「参加することで,スマートメーターなど米IT業界の取り組みを把握できる。また,蓄電技術などを米国に売り込むことができる。それが参加する狙い」(ある関係者)。

 今回はニューメキシコ州のプロジェクトだが,今後さらにほかの州でも同様のプロジェクトが立ち上がるもよう。こうしたプロジェクトからも,蓄電技術などを狙って日本側に共同研究の誘いが来る可能性もあるという。

(日経エレクトロニクス,2009年6月1日号に関連する記事を掲載しています。)