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図1 今回作製したペロブスカイト型酸化物を用いた無機EL素子の発光
図1 今回作製したペロブスカイト型酸化物を用いた無機EL素子の発光
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図2 今回開発した無機EL素子の模式図
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図3 作製した無機EL素子の発光スペクトルと発光時の素子の写真:発光層が単層の二重絶縁構造薄膜EL素子(左),2層の発光層をもつ二重絶縁構造薄膜EL素子(右)
図3 作製した無機EL素子の発光スペクトルと発光時の素子の写真:発光層が単層の二重絶縁構造薄膜EL素子(左),2層の発光層をもつ二重絶縁構造薄膜EL素子(右)
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図4 各種EL素子の特性比較
図4 各種EL素子の特性比較
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 産業技術総合研究所は,約10Vの低い交流電圧で面発光する赤色無機EL素子を開発した(ニュース・リリース)。産総研によれば,これまでの無機EL素子と比較して発光電圧が1/10以下という。低電圧で赤色に面発光するEL素子が実現したことで,電源の小型化を図りながら,面発光による広い視野角を得られるとする。今後,高輝度化や多色化を進めることで照明や光源,ディスプレイなどへの応用に期待する。

 開発した無機EL素子は,構成する各層の材料にペロブスカイト型酸化物を用いた。この材料は化学的に安定で,酸化や熱による特性の劣化が少ないといった特徴もあるという。この結果,封止などのプロセスを短縮でき,製造プロセスの簡素化が図れるとする。これまで産総研は,多数のペロブスカイト型酸化物が紫外線による励起で顕著な蛍光を発することを発見し,発光層の薄膜化に成功していた。今回,これらのペロブスカイト型酸化物を絶縁体薄膜と積層化して,安定性に優れた無機EL素子の開発を試みた。

  今回開発した無機EL素子は,電極基板上に絶縁層/発光層/絶縁層をパルス・レーザー堆積法(PLD法)を用いて作製した。光源はArFエキシマ・レーザ(波長193nm)を使用した。作製条件は基板温度が700℃,成長雰囲気が酸素10Paである。これを大気中での熱処理した後,PLD法で透明電極を形成し無機EL素子としたという。

 電極基板と発光層,絶縁層の材料は以下の通り。いずれも資源的な制約が少ない材料を採用したとする。まず電極基板にはニオブ(Nb)を1%添加したチタン酸ストロンチウム(1%Nb-SrTiO3)を用いた。発光層にはペロブスカイト型酸化物(ABO3)であるチタン酸カルシウム・ストロンチウム((Ca0.6Sr0.4)TiO3)のAサイトに微量のプラセオジム(Pr)を発光中心として添加したもの。絶縁層には,ペロブスカイト型酸化物のチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を用いている。PLD法により,これらの薄膜を連続成長させて発光層を2層の絶縁層で挟んだ構造から成る素子「二重絶縁構造薄膜EL素子」を作製した。上部の透明電極はITO(indium tin oxide),またはSnO2膜である。

 まず発光層が単層の無機EL素子を作製し,14V,1kHzの交流電圧を印加したところ,透明電極全体が赤色に面発光したという。発光スペクトルは,中心波長612nmに鋭いピークを示した。これはPr3+D2から3Hへのエネルギー遷移に起因するものと考えられ,発光開始電圧は約10Vだった。さらに2層の発光層を持つ素子を作製したところ,単層発光層のEL素子の約2倍となる24Vで強い赤色面発光を得たという。

 なお今回の研究成果は,ドイツの科学誌「Advanced Materials」に掲載される。