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 国内の多くの携帯電話機メーカーが,2004年に設立されたベンチャー企業であるモルフォの画像処理ソフトウエアを採用するようになった。手ブレ補正やパノラマ写真生成,ワンセグ映像のフレーム補間などのソフトウエアを提供する同社は,2009年だけでもNEC,シャープ,東芝,パナソニック モバイルコミュニケーションズ,富士通の携帯電話機に採用されたことを公表しており,ソフトウエアのライセンス数が累計で7000万を超えたという注1)。起業から5年で着実に実績を残しつつあるモルフォは,何を強みとして成長してきたのか。モルフォ 代表取締役社長の平賀督基氏と,「写メール」の生みの親の一人として知られる同社 常務取締役 営業本部長の高尾慶二氏に聞いた。

注1)「7000万」という数字は,モルフォのソフトウエアを搭載した携帯電話機の出荷台数とは異なる。1機種が複数のソフトウエアを採用するケースもあるためだ。例えばNTTドコモの「SH-07A」とソフトバンクモバイルの「933SH」(いずれもシャープ製)は,モルフォの7種類のソフトウエアを採用している。ある機種に搭載したソフトウエアの数に,その機種の出荷台数をかけた数字を合計したものが7000万超であるという。

連写画像合成ソフトウエア「StroboPhoto」を使って撮影
シャープの携帯電話機「SH-07A」「933SH」が搭載した「ストロボフォト」機能は,連続して撮影した10枚の静止画を合成するモルフォのソフトウエア「StroboPhoto」を用いている。被写体の動きとカメラの動きをそれぞれ推測し,被写体が動いていない部分にブレを生じにくくしたのが特徴である。この写真で被写体となって手を動かしてくれたのが代表取締役社長の平賀氏。
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 現在は携帯電話機向けの画像処理技術が事業の中心となっているモルフォだが,その方向性が固まるまでには紆余曲折があった。学生時代にコンピュータ・グラフィックスや画像処理の研究に勤しんだ平賀氏は,2002年に東京大学大学院の理学系研究科情報科学専攻(博士課程)を修了した。「研究職に就くよりも,民生用製品の開発に携わりたい」との思いから起業を決意。2004年5月にモルフォを設立した。

映像制作を目指すも…

 「創業当初は,映像制作をやりたいと思っていたんです。でも,いざ始めてみると,まったくおカネにならなかった」(平賀氏)。結果的に映像制作の世界からは離れたが,そのときに培った技術が,今のモルフォの礎となっている。当時,モルフォはモーフィング(ある状態から別の状態に変化する様子を段階的に見せる技術)の映像を制作するために,2枚の静止画から中間的な静止画を生成する技術を開発していた。「その技術には,2枚の画像の特徴点を抽出し,その特徴点の動きベクトルを効率良く計算する独自のアルゴリズムを含んでいた」(平賀氏)。これが,電子式手ブレ補正技術の基になった。

 画像処理技術の提供を事業の中心にしようと方向転換した平賀氏らは2004年10月に,静止画撮影用の手ブレ補正ソフトウエア「PhotoSolid」を完成させる。カメラから入力した映像を解析することで上下と左右,前後の3軸に,各軸の回転方向を含めた合計6軸方向の手ブレを検出し,それに基づいて補正した静止画を生成するソフトウエアである。このときはパソコン用のソフトウエアだったが,組み込みシステム向けに浮動小数点演算を減らすといった改良を進め,携帯電話機メーカーなどへの売り込みを始めた。最初の搭載機種は,2006年6月に発売されたNTTドコモの「N902iS」(NEC製)だった。

 その後,モルフォは新しいソフトウエアを立て続けに開発していく。PhotoSolidと同時期に開発した動画撮影用の手ブレ補正ソフトウエア「MovieSolid」のほか,動画を撮影するときのようにカメラを動かすとパノラマ画像を生成する「QuickPanorama」,15フレーム/秒のワンセグ映像のフレーム補間を行って30フレーム/秒にする「FrameSolid」,指定した被写体を自動追尾する「TrackSolid」など,現在では携帯電話機向けを中心とする9種類のソフトウエアを提供している。その多くは,カメラなどから入力した映像を解析して,フレーム間での特徴点の動きを計算するアルゴリズムが基になっている。その動きベクトルがカメラの動きを意味するのか,被写体の動きを意味するのかを判別することにより,手ブレ補正や被写体の自動追尾などを実現しているのである。「今後2~3年の間は,動き検出エンジンを使ったソフトウエアの提供が中心になると思う」(平賀氏)。

指定した被写体を自動で追いかける
指定した被写体を自動で追いかける
シャープの携帯電話機「SH-07A」「933SH」は「TrackSolid」も搭載した。タッチ・パネル操作で被写体の一部を選択すると,その被写体が動いたり,カメラが動いたりしてもその被写体を自動で追尾する。

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