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JAFCO America Ventures Inc.の菅谷氏
JAFCO America Ventures Inc.の菅谷氏
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 米オバマ政権のもと,積極的に取り組まれている次世代送電網「スマートグリッド」。米国は,この潮流を活用して同国の産業競争力向上を目指している。中には,日本の環境技術をライバル視するような動きも出てきているという。米カリフォルニア州シリコンバレーのベンチャー・キャピタル(VC)である,JAFCO America Ventures Inc. President & CEOの菅谷 常三郎氏に話を聞いた(聞き手は蓬田 宏樹=日経エレクトロニクス)。

――シリコンバレーで活動する中で,米国のスマートグリッドの取り組みをどう見ていますか?

菅谷氏 最近,スマートグリッド分野で,「日本外し」と言えるような動きが始まったと感じています。

 先日,シリコンバレーで開催された,あるグリーンテックのカンファレンスに参加しました。そこには,基調講演として元米副大統領のAlbert Gore氏が招かれていた。彼は人気者ですから,多くの人が集まっていました。


スーパーグリッドを目指す

 Gore氏の講演内容は,スマートグリッドに関するものでした。スマートグリッドに取り組む意義について,自身がかつて推進した「情報スーパーハイウエー構想」になぞらえて,「SuperGrid(スーパーグリッド)構想」と呼び,積極的な取り組みの必要性を訴えていました。これによって米国の産業競争力向上を図り,新たな成長や雇用を生み出せるという考え方です。

 気になったのは,彼のスピーチの中で「Japan」という言葉が,全く出なかったことです。スマートグリッドが世界的に進展していくという話の中で,中国やロシア,ブラジル,インド,欧州各地域の話題がたくさん出てきた。中国の企業と連携するとか,先進的な他国政府と協調するといった話題を出しながらも,日本の話は全く出てこなかったのです。

 スマートグリッドにおいては,米国の強いIPネットワークの技術だけではなくて,電源システムや蓄電池などの技術が不可欠で,こうした分野は日本の企業が強みを持つところです。なのに,日本の話題は出なかった。このことに私は,非常に政治的な意味があると感じました。

 米国は既に,スマートグリッドの産業競争力向上において,日本が将来の競争相手になることを十分感じているのではないでしょうか。だからこそ,「日本外し」が始まったという気がします。米国は自動車産業において,日本の環境技術にずいぶんとやられました。「スマートグリッドでは同じ轍は踏まない」と,考えている人は少なくないでしょう。

 Gore氏は,米国でも有数のVCであるKPCB(Kleiner Perkins Caufield & Byers)のアドバイザーを2007年から務めています。Kleinerといえば,国策的な投資をするVCとして知られている。こうした背景からすると,Gore氏のスピーチには,どうしても政治的なにおいを感じてしまいます。

 Gore氏の講演は,一例に過ぎません。VCとしてシリコンバレー地域で活動していると,米国のこうした流れを,ほかにも様々な面から肌で感じてしまうんです。