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図1 無電解メッキで作成した厚さ8μmのPd薄膜の箔
図1 無電解メッキで作成した厚さ8μmのPd薄膜の箔
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 産業技術総合研究所(産総研)の環境化学技術研究部門は,厚さ8μmのPd(パラジウム)薄膜の箔を作成する技術を確立し,半導体製造装置向けの純度99.99999999%(テンナイン)と高純度な水素ガスをつくり出せる精製モジュールを開発、実用化にメドをつけた。産総研のベンチャー開発センターは,同研究部門が確立した研究開発成果を基に,水素ガス精製モジュールを事業化するベンチャー企業を創業する開発戦略タスクフォースに対する支援活動を行っている。

 環境化学技術研究部門膜分離プロセスグループ長の原重樹氏の研究開発グループは,Pd膜が水素ガスしか透過させない性質を利用する水素ガス分離・精製膜面の開発を進めてきた。今回開発した手法は,ポリアミド(ナイロン)などのエンジニアリングプラスチックの基板表面にPdイオンを含むポリマーを塗布してポリマー層をつくり,熱処理による還元反応によってPd微粒子をポリマー表面に多数析出させる。この表面状態の基板をPdイオンを含む無電解Pdメッキ液に浸け,Pd微粒子を結晶成長の核として利用して,厚さ8μm程度のメッキ層に成長させる。その後,有機溶媒によってポリマー層を除去することによって,Pd薄膜を得る(図1)。現在作成できるPd膜の箔は大きさが80mm×90mm程度だ。水素ガス精製モジュールの実証試験では,その中心部分の30mm×60mmをPd膜箔として用いた。

 このPd膜をある工夫を施した支持体に固定して分離精製膜を作成し,水素ガス精製モジュールを組み上げた。Pd膜に水素ガスを主成分とする混合ガスを400℃・200kPaで透過させたガスをガスクロマトグラフィーで質量分析した結果,水素ガスしか透過させていないことを確認した。この透過実験によって,作成したPd膜は結晶欠陥がない多結晶膜であることが証明された。現在,精密圧延によってPd膜を作成する方法も開発中だが,この方法では結晶欠陥がないPd膜の作成に成功していないという。

 Pdは単位質量当たりの価格が高価であるため,薄い方が材料コストを下げることができる。原氏によると,純粋なPdよりも,Ag(銀)を23~25原子%含むPd合金の方が水素ガス透過能に優れているので,今後はPd-Ag合金製やPd-Cu(銅)合金製膜の箔を開発する計画だ。合金化によって高性能化と同時に材料コストを下げることもできるからだ。また,Pdをまったく含まないZrNi(ジルコニウム・ニッケル)金属ガラス膜の開発も同時並行に進めている。

 原氏は,ベンチャー開発センターの事業化プラットフォームである開発戦略タスクフォースの仕組みを利用して水素ガス精製モジュールを事業化するベンチャー企業の設立を計画している。市場調査した結果,LEDを製造するMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition,有機金属気相成長)装置向けの水素ガス精製装置の市場が伸びつつあるため,同仕様向けの高純度水素ガス用の水素ガス精製モジュールを実用化する計画を練っている。同モジュールの販売価格は400万円程度にする計画だ。同モジュールの事業化は,半導体メーカーや半導体製造装置メーカーと組んで実施する予定だ。製品化する際には、例えばPd膜箔の支持体などの加工コストを下げるなどの改良を加える必要があると見られている。

■変更履歴
記事掲載当初,第1段落で「テンナイン」の表記を誤っていました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。