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 米Massachusetts Institute of Technology(MIT)は,カーボン・ナノチューブを用いた新しい発電現象「熱力波(thermopower wave)」を発見したと発表した(発表資料)。詳細は,2010年3月7日付けの学術誌「Nature Materials」に論文を発表した。

 これを発見したMIT Associate Professor of Chemical EngineeringのMichael Strano氏によると,この熱力波は,カーボン・ナノチューブ上を熱の波が高速伝播する際に,電子またはホール(正孔)を同時に運ぶ現象であるという。具体的には,多層カーボン・ナノチューブ(MWCNT)を,プラスチック爆弾の主材料として知られるシクロトリメチレントリニトロアミン(RDX)でコーティングし,その一端にレーザ半導体で「火」をつける。すると,熱の波が導火線のようにMWCNT上を高速に移動する。その移動速度は温度2860Kの場合に2m/s以上で,「一般の化学反応速度の1万倍」(MIT)である。Strano氏らは,この波と同時に非常に大きな電力が作り出されることを発見した。論文での出力密度は7kW/kgである。「論文の後も開発が進み,今はLiイオン2次電池の100倍に相当する出力密度になっている」(MIT)という。

 Strano氏によれば,この現象は,熱電変換素子で知られる「ゼーベック効果」では説明がつかないという。「燃焼波(combustion wave)」と呼ばれる現象は,100年以上前から理論的な解析が進んでいるものの,カーボン・ナノチューブ上で燃焼波が発生し,しかもそれが電流を発生させることは,これまで知られていなかった」(同氏)。

 この現象を利用した具体的な応用先はまだ見えていないが,「米粒大の超小型センサや体内に埋め込み可能な電子機器など,あるいは空気中にばら撒いて使う環境センサなどに使えるのではないか」(Strano氏)。

 この現象は,不可逆反応であるため2次電池用には使えないが,「漏電したり放電したりせず,半永久的に保管できる(1次)電池を実現可能」(Strano氏)とする。