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―― その1その2その3からの続き ――

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 次に米Google Inc.の話をします。Google社は結構,悩んでいると思います。Google社は既にインターネット業界では巨人です。国によって違いますが,検索のマーケット・シェアはだいたい7~8割,インターネット広告でもかなりのシェアを持っています。とすれば,ここからGoogle社が利益を増やして株価を上げようとしたら,何をすればいいでしょうか。

 Google社の経営陣の答えは,たった一つだと思います。市場を大きくするしかない。今,8割ある検索のシェアを9割に増やしたところで,たかだかそれだけしか増えません。Google社としては,人々がもっとインターネットを使うようにしたい。すなわち,より多くの人がネットにアクセスし,かつ一人ひとりがもっとネットに依存する状況にしたいのです。

 そのためには,今はまだ先進国の人しか使っていないインターネットを発展途上国に広めて,人々にネットにアクセスしてほしい。また,先進国の人たちにも,パソコンだけでなく携帯電話機やモバイル端末で,いつでもどこでもアクセスしてほしいわけです。こうしたことによって市場全体を大きくする。別の言い方をすれば,全人類のネットに対する依存度を上げたいんです。それしかGoogle社として今後,成長していく方法はない。

 こうした目で見ると,なぜGoogle社が光ファイバを購入したり,電力網を作ろうとしたりといったように,いろんなことをしているのかが分かります。別に電力会社を作ってもうけたいわけではありません。安い電力供給を確実に受けることによって,アクセスがもっと増えた場合の状況に備えたいのです。

競争を引き起こすことで中間コストを下げる

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 インターネットには,映像や音楽,ニュース,電子商取引サイトといった,さまざまなデジタル・コンテンツが存在しています。こうしたコンテンツが最終的に消費者に届くには,いろんなものを経由する必要があります。Webサービスだったり,最終的にユーザーに届けるための通信部分,すなわち光ファイバだったり携帯電話網だったり。パソコンや携帯電話機といった端末自体もそうです。こうしたデバイスは,CPUやOSが載ることで成り立っています。これらのものが消費者とコンテンツの間にあることで,はじめて消費者に届くのです。

 消費者から見ると,間にあるこうしたものは,すべてコストです。デバイスを買ってこなければネットにアクセスできないし,携帯電話会社に月額料金を払わなければネットにはつながりません。これだけのコストが必要になると,開発途上国の人たちはなかなかネットにアクセスできません。先進国でも,お金を持っている人でなければ難しい。家ではネットにアクセスできるけれども,外出したときのネット使い放題の3000円は高すぎるという人がいるわけです。もしくは,携帯電話機の3万円という価格が高くて出せないとか。Google社は,こうしたもののすべての価格を下げたいと考えています。メーカーにとってGoogle社は別に敵対する存在ではありませんが,同社が本当にしたいことは,デバイスやOSやCPU,通信ビジネスといったものをすべてコモディティー化することです。

 実はこれは以前,米Microsoft Corp.と米Intel Corp.が一緒にやったことと同じです。自分たちのビジネスを大きくするには,そこに付随する部分で激しい競争を起こさせて,そこでの価格を下げればよいのです。Intel社とMicrosoftは,CPUとOSをしっかりと部品化することによって,誰でもパソコンを作れるようにしました。これにより,パソコン業界にものすごい競争が起こった。昔の日本ではNECがパソコン市場をほぼ独占していて,同社が市場をコントロールしていたため,パソコンの価格はそんなに下がりませんでした。それが,NECにMS-DOSやIntel社のCPUを採用させて,最終的にパソコンがWindowsを採用した途端にものすごい競争が起こり,パソコンの価格が大きく下がりました。最終的にはパソコン業界全体は大きくなり,Microsoft社とIntel社も大きくなりましたが,ハードウエアを売っているメーカーの利益率は下がりました。

 Google社としては,ビジネスをもっと大きくしたい。そのためには,開発途上国の人や月々の3000円が払えない人,3万円のデバイスが買えない人にネットを使ってほしい。こうした人たちのネット依存度を高めたい。そのためには,こうしたものをコモディティー化して安くするしかないんです。それがGoogle社がやっていることです。別にGoogle社が悪いことをしているという話ではありません。彼らのクラウド・コンピューティングのビジネスを大きくするにはそれしかないのです。