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 三重県産業支援センターは,薄くて曲げられるといった特徴を備えたシート型Liポリマ2次電池の開発を進めている(Tech-On!関連記事1Tech-On!関連記事2)。固体電解質を用いた全固体型であり,発火や爆発の可能性が大幅に低い。印刷技術を活用するロール・ツー・ロールの製造を用いることも,大きな特徴である。日経エレクトロニクスは今回,シート型全固体Liポリマ2次電池の試作ラインを取材する機会を得た。

 試作ラインは,三重大学 次世代型電池開発センター内の施設と,三重県産業支援センター 高度部材イノベーションセンター内の施設の大きく2カ所に分かれている。前者の施設で正極層を形成したプラスチック・シート,負極層および固体電解質層を形成したプラスチック・シートをそれぞれ作製し,後者の施設で前出のシートの張り合わせとラミネート内への封止を行う。

シートの張り合わせだけならば厚さ100μm程度


 三重大学 次世代型電池開発センター内の施設は,室内の露点温度を-40℃の乾燥した状態にしており,水分を極力排除して電極層や電解質層などを形成できるようにしている。施設内には,電極層や電解質層をプラスチック・シートに塗布する装置や塗布後に各層を改質する電子線照射装置などがある。

 各層の形成プロセスは次の手順で進める。まずプラスチック・シート上に負極材料を塗布・乾燥させた後に電子線照射し,続いて電解質層の材料を塗布・乾燥させた後に電子線を照射する。正極層については,別のプラスチック・シート上に正極材料を塗布・乾燥させた後に電子線照射する。塗布に用いる電解質材料は,ポリエチレンオキシド系の高分子材料に架橋剤を混ぜたものである。電子線照射によって高分子材料が架橋される。負極材料や正極材料については活物質だけでなく高分子材料が混ぜてあり,電子線照射によって架橋するようにしている。正極にはLiFePO4と炭素などの複合体,負極にはLi4Ti5O12と黒鉛やSiの複合体を用いたという。

 日経エレクトロニクスが取材時には,負極膜の塗布・乾燥をデモンストレーションした。炭素系材料に高分子材料を混ぜたスラリー状の材料をロール状に巻かれたプラスチック・シート上に塗布する様子を公開した。塗布速度は0.3m/min(プラスチック・シートが流れる速度)である。塗布工程の後には2段階のヒーター乾燥がある。それにより,負極膜中の溶媒を飛ばして乾燥させる。その後,シートに切り出して,電子線照射工程に移る。電子線は数十秒照射し,負極膜中を架橋させる。

図版説明
塗布装置。負極材料を塗布しているところ

図版説明
負極材料を塗布後のシート

 プラスチック・シートを含めた厚さは,負電極層+電解質で70μm強しかない。正電極層を付けたプラスチック・シートは30μm程度であり,両シートを合わせて100μm程度と薄い。

図版説明
シート上に負極層と固体電解質層を形成したもの