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昼間見たイタリア館は,コンクリート打ち出しのあまり目立たない建物に見える。正面の透明な部分は普通のガラス。
昼間見たイタリア館は,コンクリート打ち出しのあまり目立たない建物に見える。正面の透明な部分は普通のガラス。
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夜見ると,コンクリート部分から部屋の明かりが漏れて見える。
夜見ると,コンクリート部分から部屋の明かりが漏れて見える。
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ドイツ館で展示されている,光ファイバ混合コンクリート「Lucem」のデモ。ドイツrobatex GmbHが開発した。壁の厚さは約2cm。この壁の向こうから強いライトを当てており,その一部が光ファイバを通して透けて見えている。
ドイツ館で展示されている,光ファイバ混合コンクリート「Lucem」のデモ。ドイツrobatex GmbHが開発した。壁の厚さは約2cm。この壁の向こうから強いライトを当てており,その一部が光ファイバを通して透けて見えている。
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イタリア館の設計責任者で建築家のGiampaolo Imbrighi氏
イタリア館の設計責任者で建築家のGiampaolo Imbrighi氏
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 上海国際博覧会(上海万博)では,非常に奇抜なデザインのパビリオンが目立つ。単に見かけだけでなく,新素材や新しい構造を採用して省エネルギーを追求したり,CO2排出を減らす工夫を重ねており,中の展示物以上にパビリオンの建物自体が面白いという例が少なくない。

 その一つがイタリア館だ。同館では,ゴミ収集ロボットの展示(関連記事)や,天井がすべてスパゲッティで出来ている「パスタの部屋」など興味深い展示をしているが,最も前衛的な試みは,パビリオンの建物にあるようだ。同館の壁は,「透明セメント」から成るコンクリート・ブロックを積み上げて作られており,太陽の光が壁を通過して部屋に届いたり,夜は部屋の明かりが壁を通して外から見える。コンクリート・ブロック1個の寸法は100cm×50cm×5cm。これを3774個積み上げて,イタリア館の壁の約4割を覆ったとする。

 この透明セメントを開発したのは,イタリアのセメント・メーカー「Italcementi Group社」。材料の詳細は明かしていないが,透明な熱可塑性樹脂とアルミナなど無機材料を,水を使わずに固めて使っているとする。5cm厚のこのブロックの光透過率は最大20%であるという。

 ちなみにドイツ館では,光ファイバを混ぜることで実現した「光を通すコンクリート」が展示されているが,「低コスト性や強度の上で我々の透明セメントのほうがずっと優れている」(Italcementi Group社)という。

 なぜこうした材料でイタリア館を建てたか。同館の建築責任者で,イタリア・ローマにある大学La Sapienza University of RomeのProfessorであるGiampaolo Imbrighi氏は,「伝統的な建築と斬新な設計や技術を用いた建築の両方を同時に実現しようとして,この材料にたどり着いた」という。「透明にしようとガラスを多く使うと建物としての強度が保てない。今回は,この透明セメントでコンクリート・ブロックを作ったことで,建設自体も容易になった」という。

 イタリア館では,この透明セメントの他にも,天井などに多数の窓を設けて,室内の温度を調節するために自動開閉するようにしたり,太陽熱を利用した温水の循環システムを用意して,ガスを利用した給湯システムを不要にしたりといった工夫をしている。