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A.T.カーニーの川原英司氏
A.T.カーニーの川原英司氏
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 「EV(電気自動車)化が進む過程で、業界構造は大きく変わり、新しいビジネスも生まれる。企業はこれまで以上に、経営資源をどこに集中させるのか見極める必要がある」━━。Tech-On!が2010年5月14日に開催したセミナー「市場変化を捉えてビジネスチャンスを切り開く」で、A.T.カーニーの川原英司氏が「電気自動車で変わる企業戦略」をテーマに講演した中で述べたもの。同氏は、EVの市場規模や普及の考え方、新しいビジネスなどについて述べた。

 川原氏はEVの市場規模について、2020年の世界の新車市場がEVとPHEV合わせて700万~800万台程度(このうちEVは 100万~400万台)と予測する。2020年の世界の新車販売台数は8000万~9000万台と試算していることから、全体の1割弱がEVとPHEVが占めると見る。

 EVの市場規模を決める要素は、環境規制や原油価格動向、技術の進化、購入価格の低下、インフラの整備、生産能力の拡大など多岐に渡る。要素が多すぎるため、具体的な市場規模の予測は難しいが、市場規模を決める要素を理解することで、状況が変化しても適切な市場規模を予測する助けになると説明した。

 EVの普及を決める主な要素は、電池のコスト、電池の性能、充電インフラの三つ。これらがお互いに補完する形で、EVは普及していく。例えば、電池のコストが高くて、1台当たりの電池容量は少なかったとしても、充電インフラが普及していれば、EVが普及する条件は整う。また、電池の性能が低くても、電池のコストを低くできれば、多くの電池を搭載することでEVを低コスト化できる。EVは、電池ばかりが注目を集めているが、例えば充電インフラに力を注ぐことなどで、新たなビジネスとして成立させる手もあると指摘した。

 市場全体では、EVとPHEVを合わせても1割程度しかない。このため、残りの9割は従来の内燃機関の改良が進む。自動車業界の企業は、内燃機関の部品の改良からEVの新規部品まで、取り組むべき項目が大幅に増えることになる。すべてを1社をカバーするのは難しいことから、今後は、他社の力を借りながら内燃機関の改良やEV事業に取り組むなど、柔軟な姿勢が求められると述べる。

 将来のEVやPHEVは、スマートグリッドのシステムの中で、蓄電池としての役割を果たすことになる。EVやPHEVが家庭や送電網に電力を供給する役割を果たす。EVはネットワーク上で走行位置や電池の充電状態が一元管理され、対応する充電ステーションに対して電力を供給するといった最適な電力供給が可能になる。

 川原氏は、充電サービス事業者として米Coulomb technologies社や米GridPoint社を挙げた。米Coulomb technologies社は、充電スポットの設置・運営と登録ユーザーに対する電力 ・情報サービスの提供を狙っている。一方のGridPoint社は、充電状態などの情報をサーバにアップロードすると同時に、電力網からクルマの充電制御も可能なシステムを想定している。電力網に十分な電力がない場合は、たとえ多くのEVが充電スタンドに集中したとしても、充電を制限することが可能だ。

 これまでのエンジン車は、複数車種でプラットフォームを共有することで低コスト化し、さらに生産規模を拡大することで大きな利益を確保してきた。これからのEVの時代は、スマートグリッドなど、プラットフォームの概念がクルマだけにとどまらないことになる。今後は、クルマにこだわらないビジネス展開が求められると述べた。

 同氏の講演全体は,Tech-On!プレミアム・サービスの会員を対象にした,ビデオ配信サービスで見ることができる。Tech-On!プレミアム・サービスのご案内はこちら