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電事連 電力技術部長の藤井裕三氏
電事連 電力技術部長の藤井裕三氏
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EVの利用はまだ想定外

――再生可能エネルギー導入における,電気自動車(EV)の役割について聞きたい。EVの備える蓄電池を活用することで,太陽光発電の余剰電力をうまく利用するという提案も出ている。「V2G(vehicle to grid)」とも呼ばれ,欧米では実証実験も始まっている状況にある。しかし日本では,まだ検討が十分に進んでいないようだ,例えば,経済産業省が立ち上げた「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」の公開資料には, EVの蓄電池を電力網に活用するアイデアが盛り込まれていないようだ。なぜ,EVの活用は,国内で検討が進んでいないのか。

藤井氏 十分に現実性のある想定がまだできないためだ。自動車用の蓄電池を電力網に接続した場合,充放電のサイクルが多くなるために,蓄電池の劣化スピードが加速して,本来の自動車の走行に支障がでる可能性がある。少なくとも今の技術水準では,利用は難しいだろう。もちろん,今後の技術開発次第では利用可能になるかもしれない。逆に言えば,V2Gを想定した蓄電池技術が2020年にどうなっているかを示すような,具体的なロードマップはまだないのが実態だ。

――現在,EVを急速充電するための充電ステーションなどの取り組みも進んでいる。こうしたEVが増えれば,急速充電などで電力網に大きな負荷がかかる可能性もある。そうした点への対策は必要になるのか。

藤井氏 充電スタンドの整備など,電力網の末端になる配電網での対処はいくつか必要になるだろう。ただし,電力網全体への影響はあまり大きくないと考えている。例えば,国内で利用されるEVの台数が1000万台以下なら,大きな問題にはならないだろう。お昼休みなど特定の時間帯に充電が集中すれば大変だが,数が増えれば需要は時間的に平滑化されると考えている。

原子力発電は計画を立てやすい

――太陽光発電と原子力発電の関係についての立場を聞きたい。電事連は原子力発電を,発電計画の中心に据えているという理解でいいか。

藤井氏 その通りだ。前述のように,2019年度までの10年間で原子力発電システムを9基増やす計画でいる。CO2削減のためにも2020年には年間電力量の50%を新エネルギーでカバーする計画を持っている。これには太陽光発電やバイオマス,風力発電,地熱発電なども含むが,切り札になるのは原子力発電だ。

 太陽光発電システムが原子力発電の代替になるという意見をよく聞くが,そういう人はしばしば(kWやGWが単位の)最大出力と(kWhが単位の)発電量を取り違えている。1000万kW分の太陽光発電の年間発電量は,今後増設する130万~140万kW級の原子炉1基分に過ぎない。

――原子力発電はベース電力だ。時間帯で見ると,夜間電力に関しては主体的な存在である。一方で,太陽光発電は昼間,大きく変化する電力需要のカバーに向いている。こうしたことから考えると,互いにすみ分けていけるのではないか。例えば,太陽光発電は夜間発電できないという弱みがあるが,そこは原子力発電がカバーする。一方で,原子力発電は昼間の急激な需要増加に対応できないという弱みがあるが,そこは太陽光発電がカバーする,という考え方である。

藤井氏 我々は昼間の需要変化分を太陽光発電システムと蓄電池の組み合わせでできるだけ賄い,火力発電を最小量にする構想を持っている。一方で,原子力発電の負荷追随運転は今の計画には入っていない。ただ,揚水発電のダムを増やして,原子力発電の夜間の余剰電力で水をくみ上げておき,昼間の電力需要の変動をそれでカバーするようにすれば,電力の需要曲線に縛られずに原子力発電の比率をもっと高められる。原子力発電システムの増設計画はたとえ遅れたとしても,中止することは無い。ベース電力の数値は上がる一方であるため,その意味で太陽光発電とバッティングすることになる。

――揚水発電があれば,それは太陽光発電の出力変動の平滑化にも役立てられる。ただ,揚水発電のコストは非常に高い。一方で,蓄電池のコストは下がってきており,揚水発電と並んだという見方も出ている。今後は蓄電池が揚水発電の代わりになるのではないか。

藤井氏 確かに揚水発電の発電コストは太陽光発電や蓄電池の導入コストと同程度だ。揚水発電が導入計画を立ててから実際に稼働するまで時間がかかるのに対して,蓄電池は設置してすぐに利用できる長所もある。しかし,揚水発電での(例えば100万kWといった)大容量を蓄電池で実現できるかは不透明だ。寿命の点でも,蓄電池はまだ15年程度が限界で,揚水発電よりずっと短い。分散して設置される蓄電池は,メンテナンスや入れ替えのコストが無視できず,長期的なコストではまだ揚水発電に分がある。

 原子力発電は,出力や発電量を長期的に計画できるのが最大の特徴だ。この場合,長期的には低コストの揚水発電が向いている。一方,太陽光発電はいつまでにどれだけ設置されるのか分からない。誰かが導入量を保証するなら,太陽光発電向けであっても電力会社は蓄電池よりも揚水発電を選ぶだろう。

――原子力発電には利用年数が40年を超えたいわゆる「老朽化問題」もある。あと数年で10数基が当初の耐用年数を超えると聞くが,発電容量を安定的に増やせるのか。

藤井氏 老朽化問題が顕在化するのは2020年以降だ。もちろん,どう対処するかは最重要課題の一つで,各電力会社が検討を始めている。

スマートメーターの役割は4種類