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 「人とくるまのテクノロジー展2010」がパシフィコ横浜で始まった(5月21日まで)。自動車メーカーや自動車部品メーカーなど365社が出展しているという。部品の多くは機械系だが,ICやLSI,電子部品のメーカーのブースも少しある。

東芝のブースの車載マイコンの展示
Tech-On!が撮影。
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東芝の車載モータ制御用マイコンの説明板
同社のデータ。
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東芝の車載モータ制御用のデモ・モード(右) まだエバ・チップがないので,回路はFPGAに実装している。
Tech-On!が撮影。
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 会場で左右方向の中心に当たる通路(奥の三菱自動車と日産自動車の間の通路)に,半導体メーカーや電子部品メーカーの複数のブースがあった。筆者は普段,ICやLSIの記事を主に担当している関係から,人とくるまのテクノロジー展2010でもチップを探してみた。以下,見つかったLSIやICの一部を報告する。

 LSIやICの中で主にロジック系のチップを担当している筆者の目を最も引いたのは,東芝(コマ番号は160)が展示した,二つの自動車用マイコンである。どちらも,英ARM Ltd.のプロセサ・コア「Cortex」をベースにしたマイコンで,一つは車載モータ制御用,もう一つは機能安全実現用だった。

重電や家電の技術を投入

 前者については,「Cortex-R4F」をベースにしたチップの説明板を掲げていた。車載マイコンにおいて東芝はルネサス エレクトロニクスなどの後塵を拝しているが,このマイコンは「モータ制御に関する全社の技術力を結集した」(説明員)もので,巻き返しを図るとする。電気自動車やハイブリッド車のモータ制御を狙う。

 同社は,独自のマイコン向けのモータ制御技術として「PMD:Programmable Motor Driver」を提供してきたが,今回,車載モータ向けに強化版の「A-PMD」を開発した。A-PMDでは,「矩形波エンジン」と「ベクトルエンジン」と名付けた二つの専用回路を使う。このうち,矩形波エンジンは「1パルス制御」と呼ぶモータを高速回転させる技術をハードウェア化したもので,もともとはエレベータや鉄道車両などに向けて開発された。ベクトルエンジンは,モータのベクトル制御の一部をハードウェア化したもので,もともとはエアコンなどの白物家電に向けて開発されたという。

 さらに,今回展示されたマイコンには,「デジタル化」したというRDC(resolver to digital converter)の回路も搭載している。この回路は,今回,新規に開発した。RDCはレゾルバ(モータの角度を検出するセンサ)が出力するアナログ信号を,モータの角度のデータ(デジタル信号)に変換する回路。

 説明員によれば,これまではマイコンに外付けされるRDCが多かったという。この外付けのRDCは大半の処理をアナログで行い,終盤にA-D変換していた。それに対して,「デジタル化」したというRDCでは最初にA-D変換する。これでレゾルバの出力信号に載る雑音成分の解析などが容易になったという。

 説明板にはCortex-R4Fがベースになったマイコンが描かれているが,まず,Cortex-M3ベースで一つのモータを制御するチップから市場に投入する計画である。その次にCortex-R4Fベースで二つのモータを制御できるチップを提供するという。

1コアでもフェール・セーフ

 機能安全実現用のマイコンは,Cortex-M3をベースにする。同社が「密結合方式」と呼ぶ技術を使って,チップ面積(や回路量)の小さなオーバヘッドでフェール・セーフの機能を実現した。例えば,従来はプロセサ・コアを二つで(2重化して),フェール・セーフ(故障が発生すると停止する)を実現していた。今回は,診断回路をプロセサ・コアに付加する。診断回路の面積はプロセサ・コアの約30%で済む。

 「密結合」とはプロセサ・コアの内部を直接モニタしていることを意味している。小さなオーバヘッドだが,密結合方式では1プロセサ・コアでも「IEC61508のSIL3」に対応するという。なお,密結合方式でプロセサ・コアを二つにすると,どちらかのコアが故障しても動作の継続が可能なフォールト・トレラントの機能を得られるという。