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円形の高分子膜スピーカー。直径16cm,重さは60g。半透明だが,振動膜には電極となるPDOTが塗られている。電極を有機材料にしたのは,「伸縮性が高いため」(NHK技研)。
円形の高分子膜スピーカー。直径16cm,重さは60g。半透明だが,振動膜には電極となるPDOTが塗られている。電極を有機材料にしたのは,「伸縮性が高いため」(NHK技研)。
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三角形のスピーカーも作製
三角形のスピーカーも作製
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直径4cm程の小型スピーカーも試作
直径4cm程の小型スピーカーも試作
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今回のスピーカーの動作原理。シートに電圧を印加すると,厚さが増減すると同時にシートの面積も伸縮する。2枚のシートに印加する電圧を逆位相にすると,一方が伸びている際に一方が縮むため,スピーカーとして機能するという。
今回のスピーカーの動作原理。シートに電圧を印加すると,厚さが増減すると同時にシートの面積も伸縮する。2枚のシートに印加する電圧を逆位相にすると,一方が伸びている際に一方が縮むため,スピーカーとして機能するという。
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 NHK放送技術研究所の「技研公開2010」(2010年5月27~30日)では,ポリウレタンから成るゴム状樹脂(エラストマー)を振動媒体として用いるスピーカーが出展された。さまざまな形状,寸法で作製することが可能で,しかも直径16cmでも60gと非常に軽量であることが特徴である。

 8K×4Kのスーパーハイビジョンを推進するNHK技研は今回,音についても「22.2chマルチチャンネル」など多数のスピーカーを利用して臨場感を高める技術展示をいくつかしている。今回の開発も,「軽さを生かして,部屋に気軽にスピーカーをいくつも付けられるようにする」のが狙いだという。

 この軽量スピーカーは,NHK技研とフォスター電機の共同開発品。具体的には,エラストマーのシートの両面に,電極としてポリエチレンジオキシチオフェン(PDOT)を薄く塗ったものを振動膜として利用する。振動するのは,シートの両側の電極に電圧を印加することで,膜圧とシートの面積が変化するためである。

 NHK技研は2008年度にも同じ樹脂シートを用いたスピーカーを出展している(関連記事)。今回は,材料ではなくスピーカーの構造を大幅に変更した。従来は,このシートを単純に円筒状に丸めていたのに対して,今回は2枚のシートを枠に張り,しかもその中央部分を張り合わせた構造にした。こうすることで,シートに張りが生まれ,振動のモードを制御しやすくなった。この結果,音域は従来タイプの450Hz~20kHzから,80Hz~15kHzとなり,より低い音を出せるようになったという。

 シート自体も従来の300μm厚から100μm厚と薄くした。これにより,駆動電圧も従来の1500Vから,500Vへと大きく下げられたという。「市販のスピーカーも600~700Vぐらいで動作しており,むしろそれより低くできた」(NHK技研)という。

 残る課題は,耐久性の確認と最大音量の増加。今回の展示では,スピーカーから数十cmの距離では十分聴ける音量で音楽を流す実演をしているが,実用化にはもう一段階のダイナミックレンジの拡大が必要なのだという。