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「TS-SLS」「ELA」「SGS」の三つのTFT基板技術に関して立て続けに発表した。さらに翌28日には,酸化物TFT基板技術についても発表した。
「TS-SLS」「ELA」「SGS」の三つのTFT基板技術に関して立て続けに発表した。さらに翌28日には,酸化物TFT基板技術についても発表した。
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 ディスプレイ関連最大の国際会議「SID 2010」で,現地時間の5月27日に有機ELパネル関連のセッション「AMOLEDs I」があった。このセッションでは,韓国Samsung Mobile Display Co., Ltd.が有機EL用TFT基板技術について立て続けに3件発表した(論文番号:53.2,53.3,53.4)。現地時間の25日の基調講演には,同社Executive Vice PresidentのSang-Soo Kim氏が「有機EL第8世代ライン構想」を発表し,課題の一つとしてTFT基板技術を挙げていたことから,同社の「AMOLEDs I」セッションでの発表は大きな注目を集めた(Tech-On!関連記事)。

 同セッションでSamsung Mobile Display社が実施した3件の発表では,有機ELの駆動に必要な高性能のTFTを造るための技術として,3種類の異なる技術がそれぞれ採用されていた。有機EL用TFTの量産には,一般的に低温多結晶Si TFT製造技術が使われている。ただ,現状では大型パネル対応に制約があり,30型前後が限界になっている。Samsung Mobile Display社が第8世代ラインでターゲットとしている55型パネルは,現状では製造できない。この低温多結晶Si TFT基板の大型化の課題を克服するために,同社が開発を進めているのが,今回発表した三つの技術である。なお,同社は低温多結晶Si TFTに加えて,酸化物半導体TFTも候補技術として開発している(論文番号:69.3)。

 韓国の研究開発の特徴については,「莫大な研究開発リソースを投入し,見込みのありそうな技術にはすべて手を付け,最終的に開発に成功した技術を採用する」(韓国メーカーでFPD関連の研究開発にかかわった経験を持つ複数の関係者)と指摘する向きが多い。有機EL用TFT基板という一つの課題を解決するために,「数多くの人員を投入してあらゆる候補技術を同時に研究開発し,互いに競わせることで勝ち残った技術を採用する」という“人海戦術作戦”が,ここでもかいま見える。

 以降では,「AMOLEDs I」セッションで発表された三つの技術の内容について解説する。

「SLS」で30型有機ELパネルを試作

 最初に登場したJ.B. Choi氏が採用したのは,「SLS(Sequential Lateral Solidification)」と呼ばれる低温多結晶Si TFT製造技術である(論文番号:53.2)。SLSでは,まず,アモルファスSi膜を形成した基板上のある領域にレーザー・ビームを照射し,低温で多結晶Si膜を造る。さらに,その領域と一部重なるように,少し横の場所にレーザー・ビームを照射する。こうして,横方向に優先的にSiを結晶成長させて,高性能のTFTの作製に向いた結晶粒界の少ない大粒径の多結晶Siを得る。J.B. Choi氏は今回,生産性を優先し,単位領域当たりのレーザー照射回数を2回以下に絞った。この方式を同社は「TS-SLS(Two-shot sequential lateral solidification)と呼ぶ。

 課題の大型パネル対応についてJ.B. Choi氏は,今回,二つの方法を提案した。一つは,2次元マスクを利用して面状のレーザー・ビームを作り,これを単位領域ごとに2回照射する方法である。さらに,基板をXY走査させながら上述のレーザー照射を繰り返すことで,大面積基板に多結晶Si膜を形成する。原理的には,どんな大きなパネルにも対応できる。同社はこの方法を「2D-SLS」と呼ぶ。もう一つは,長さ730mmと長尺の線状レーザー・ビームを新たに開発し,これを基板に照射する方法である。基板は1方向に走査させる。55型パネルの短辺は730mmよりやや短いため,「55型パネルまで対応できる」と,J.B. Choi氏は言う。同氏は今回,これら二つの方法により,30型有機ELパネルをそれぞれ試作した。第4世代基板(基板寸法は680mm×880mm)で造った。