PR
「TS-SLS」「ELA」「SGS」の三つのTFT基板技術に関して立て続けに発表した。さらに翌28日には,酸化物TFT基板技術についても発表した。
「TS-SLS」「ELA」「SGS」の三つのTFT基板技術に関して立て続けに発表した。さらに翌28日には,酸化物TFT基板技術についても発表した。
[画像のクリックで拡大表示]

「ELA」でのビームの重なりによるムラを,冗長回路で克服

 2番目に登場したS.M. Choi氏は,中小型有機ELパネルの量産ラインで実績のあるエキシマ・レーザー・アニール(ELA)法の大型パネル対応技術について発表した(論文番号:53.3)。エキシマ・レーザー・アニール法では,線状のレーザー・ビームを走査することによって,基板上に成膜したアモルファスSiを低温で多結晶化する。ただ,レーザーのビーム長は最大460mmと短く,1回の走査で55型パネルのような大面積をカバーすることはできない。従って2回走査することになるが,1回目と2回目の走査領域が重なる部分がライン状に発生し,これが筋状の表示ムラの原因になる。レーザー・ビームの走査領域が重なった部分のTFTの特性が,他の場所のTFTに比べて大きく変わってしまうからである。

 S.M. Choi氏は今回,レーザー・ビームの走査領域が重なった部分のTFTを使わずに駆動できる技術を開発した。従来の有機ELパネルでは,各画素の有機EL素子への電流供給に,同一画素内の駆動回路を使っていた。しかし,この駆動方法では,上述の領域に筋状の表示ムラが発生してしまう。そこでS.M. Choi氏は,レーザー・ビームの走査領域が重なっていない近隣の画素の回路を使って駆動することを考えた。そして,すべての画素において,近隣の画素の回路を使って駆動する。最も端の画素については,あらかじめ表示領域の外にも同様の回路を形成しておき,それを使って駆動する。

 S.M. Choi氏は今回,筋状の表示ムラは最大画素6列分にわたって発生する可能性があると判断し,6列隣の画素の回路を使って駆動できるような冗長回路を開発した。そして同氏は,この冗長回路を形成した4.82型QVGA(320×240画素)の有機ELパネルを試作した。パネル内にレーザー・ビームの走査領域を重なった部分をあえて設けて,今回の冗長回路を使った駆動によって筋状の表示ムラがほぼ見えなくなることを確認した。この技術を使えば,ビーム長460mmのエキシマ・レーザーでも,70~100型の有機ELパネルを製造できるようになるという。

「SGS」の残留金属による表示ムラを,新規の画素回路で低減

 3番目に登場したD.Y. Choi氏は,レーザーを使わない「SGS(Super Grain Silicon)」と呼ぶ低温多結晶Si技術による有機ELパネルについて発表した(論文番号:53.4)。SGSは,基板上に成膜したアモルファスSi内に,少量のNiなどの金属触媒を導入した後,高速で熱処理することによって低温多結晶Si膜を形成する技術である。

 先述のSLSやELAとは異なりレーザーを使わないため,大面積対応において,レーザー・ビーム長の制約を受けることはない。ただ,この技術で製造した多結晶Si膜には,残留したNiなどの金属触媒が存在する。この残留金属によって低温多結晶Si TFTのオフ電流が上昇し,表示ムラの原因になる。従って,やはり大面積における均一性の確保が課題になっている。有機EL素子の輝度(有機EL素子に流す電流)を制御するためのスイッチングTFTをマルチゲートにしてオフ電流の低減を図っているが,それでもまだ,発光時にソース・ドレイン電圧が変動してリーク電流が発生する問題が残っていた。

 D.Y. Choi氏は今回,このソース・ドレイン電圧の変動を抑えるためにトランジスタを一つ追加した新たな画素回路を開発し,その効果をシミュレーション結果と試作パネルの写真によって示した。シミュレーション結果によると,従来の回路では,輝度制御のためのスイッチングTFTがデュアル・ゲートの場合でEL電流バラつきが102%,4ゲートの場合で同6.21%だったのに対して,今回の回路では2.2%に低減できるとする。また,上述の3種類の画素回路による2.8型の有機ELパネルをそれぞれ試作し,表示画像の写真を見せて,輝度ムラ低減の効果を示していた。