調査会社のシード・プランニングは,医療分野におけるクラウド・コンピューティング活用に関する市場規模が,2015年に1164億円,2020年に1928億円になるとの予測を発表した。2010年には100億円にも満たなかった市場だが,今後の大幅な成長が見込めるという。
市場の拡大を加速する要因は,大きく三つあるとシード・プランニングは分析する。(1)厚生労働省通知「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正,(2)レセプトのオンライン化による医療機関でのインターネット活用の普及,(3)地域医療再生基金の交付,である。
(1)の「診療録等の保存を行う場所について」は,2010年2月に通知が出された。情報システムの安全管理のガイドラインなどが遵守されることを前提条件として,民間事業者による診療記録などの外部保存が可能になった。これまでは,震災対策などの危機管理上の目的に限り,民間事業者への外部保存が認められていたが,こうした限定がなくなった。これにより,民間事業者による,クラウド・コンピューティングを活用したサービス市場が拡大する可能性があるという。
(2)のレセプトのオンライン化については,既に多くの医療機関で実施している。こうした医療機関が,他施設との連携や自前で保守管理をする必要がないなどの利点を求めて,クラウド・コンピューティングを活用する動きが加速する可能性があるという。
(3)の地域医療再生基金は,地域医療を再生するために2010年から5年間に渡って交付される25億円の補助金(総額2350億円)。クラウド型の電子カルテや,地域医療連携システムの導入に対して,この基金を見込んでいるケースが多いという。