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 日本市場をはじめとする先進国市場の需要の伸びがあまり期待できない中、伸張著しい新興国市場での販売増を狙う日本メーカーが増えてきている。だが、先進国市場では知られていた著名なブランドでも、新興国市場ではほとんど知名度がないケースも多い。新興国市場を攻略するには、いかにブランドを認知・浸透させるかが重要なポイントの1つとなっている。

中国34カ所の病院に相談室


 こうした中、中国市場での存在感を高めている日本メーカーが、ほ乳びんやその飲み口(乳首)、母乳パッド、乳児用ソープ、お尻ふきなどの育児用品を開発・製造・販売しているピジョンだ。同社は中国での売上高を、2008年1月期の47億円から2009年1月期には72億円、2010年1月期は86億円と順調に伸ばしている。そして、これを陰で支えた1つの取り組みが、中国34カ所の主要病院に開設した「母乳育児相談室」である。

 この母乳育児相談室とは、日本の厚生労働省に当たる中国の国家衛生部と同社が共同で運営しているものである。病院の一角に同相談室を設け、出産したばかりの母親にピジョン製品を使いながら母乳パッドやほ乳びんの使い方などを教えたり、育児に関する相談を受けたりする。ここで使うピジョン製品は、育児未経験の母親にとっては初めての育児用品。指導のための一時的な教材とはいえ、病院で真っ先にピジョン製品を使ってみてもらえる機会を得られることは、ピジョンブランドを中国の母親たちに認知してもらう上で大きな意味を持つ。

 同社執行役員海外事業本部長の高坂功氏によれば、こうしたアプローチは中国市場を意識して新たに考え出したものではない。先進国市場で成功したやり方をアレンジしたものだ。もっとも、中国全土で34カ所と多くの病院に入り込めたのは、中国の国家衛生部から信頼を得られた成果といえる。そのきっかけをつくったのは、病産院へのさまざまな情報の提供や病産院の中でのセミナーの開催といった地道な活動に他ならず、「2002年に中国市場に進出した当初からこれらの活動をかなり熱心に、かつ地道にやってきたことが功を奏した」と同氏は振り返る。