NTT、NTT東日本、NTTドコモの3社は2011年3月30日、東日本大震災による被害と復旧の状況、今後の見通しについて記者会見を開催した(図1)。登壇したNTT代表取締役社長の三浦惺氏は「固定電話・携帯電話とも現在までに約90%が復旧した。残りの通信拠点についても、福島第一原子力発電所周辺を除いて4月末をめどにほぼ復旧させたい」とした(図2)。NTTグループ全体で、1万人を超える体制で復旧活動を実施しているという。
今回の震災による通信設備の被災状況については、固定系サービスでは最大時約150万回線に影響があり、移動系サービスでは最大時6720局の無線局が停波したことを発表した。「地震と津波によって基地局や伝送設備がこれだけ被害を受けたのは、これまでに例がない」(NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏)という(図3)。被害額については「まだ把握できていないが、阪神大震災に比べかなり大きい復旧費が必要になる」(NTTの三浦氏)との見通しを示した。
ライフラインの寸断で被害が拡大
今回の震災と津波で通信設備が受けた被害は以下の通り(図4)。(1)通信設備を設置している局舎ビルの水没、流失、損壊、(2)局舎ビル間をつなぐ通信ケーブルの切断、管路の破損、(3)屋外の電柱倒壊、架空ケーブルの切断、(4)携帯電話基地局の倒壊、流失、である。さらに震災後、商用電源が長期間復旧しなかったりライフラインが寸断されたりしたため、被害が拡大した。通信設備や携帯電話基地局などで停電時の対策用に備えていた、蓄電池の容量や自家発電機の燃料が枯渇したためだ。
NTTドコモの山田氏によれば、携帯電話機の基地局は「1~3時間給電できる蓄電池を備えている」。だがその時間を超過してしまえば、保守のために担当者が基地局に向かい、発電機を使って蓄電池に充電しなければならない。「基地局に向かう道路が震災で分断されている上、ガソリンも手に入らない。さらに、発電機を駆動するための軽油も手に入りにくかった」(NTTドコモの山田氏)と当時の状況を語った。
福島原発周辺は手付かずの状態
NTTドコモは不通となっている携帯電話機の307カ所の基地局のうち、2011年4月末に248カ所を修理・新設などで回復させる方針である。ただし、福島第一原子力発電所の30km圏内にある68基地局については現在も未点検の状態。早急に復旧させたいが復旧時期は未定だとした。同年5月末までに福島の原発周辺を除く残り59局を復旧させる。
NTT東日本では固定電話などに使う交換局が入ったビル55カ所が倒壊などの大きな被害を受けた。「沿岸部では6万5000本の電柱が流出・折損し、ケーブル6300kmが流出・損傷したとみられる」(NTT東日本 代表取締役社長の江部努氏)。中継伝送路として新たな迂回ルートを構築したり、NTTドコモの光ファイバーを借り受けて暫定復旧をしたりする対策で、福島第一原子力発電所周辺を除き、4月末までに46カ所のビルを仮局舎の建設などで復旧する(図5)。